秋津レークタウン建築協定違反事件裁判最終陳述
平成20年4月14日
原告 高 木 敏 夫
この度の結審に際し、時間をいただきありがとうございます。
私たちが住む秋津レークタウンは、閑静な住居専用地域として開発されており、
スーパーマーケットをはじめ、診療所、銀行、郵便局等もあります。突然アパート
が建つということもありません。このように住環境、生活環境が優れて保持されて
いるのは、ここに「秋津レークタウン建築協定」が締結されている賜物です。建築
協定は、熊本県知事が市街化調整区域であるこの土地の開発を許可するにあたって、
必須の条件として締結を義務付けたものでもあります。
さて、旧ニコニコ堂秋津レークタウン店の土地が、今回問題となっています。
ここは、秋津レークタウンや隣接の市営団地等、周辺の住民の生活の利便性を考慮
し、開発地域に付帯する公益的施設のスーパーマーケットという、特定の用途制限
及び床面積制限が定めてあります。
今までの裁判経過でも明らかなように、被告はこの土地を、一般住宅を建築して
転売できるとか、スーパーマーケットよりも環境負荷が軽ければ何でも建築可能だ
と勝手に解釈して購入しています。建築協定に定められた制限は、協定者全員に
一率に適用することでその実効性を高めてあるもので、被告の解釈のようなまぎれの
生じる余地はありません。不動産業者等の誤解は住民には責任はありません。
そして、市から建築確認が出ていることを唯一の根拠に、建築協定に違反した
焼鳥屋や中華料理店の建物が私たち住民の抗議の声にも耳を貸さず、強引に建築
されてしまったのです。ちなみに建築確認という行政処分は、建築計画の関係法令との
適合性を熊本市建築主事が確認したものに過ぎず、私法上の契約とされる建築協定
はこの審査対象に含まれていませんから、被告の主張するような、建築確認をもって
すべてが許されるという「錦の御旗」のような許可証ではないのです。
被告は、行政の指導に従っただけで落ち度はないと主張していますが、熊本市建築
指導課は「自治会長の同意書を出せばよいとは言っていない」と私たちに答えて
います。行政の対応は極めて無責任だと思いますが、たとえそうであったとしても、
私たち協定者に瑕疵があるわけでなく、とばっちりを受けなければならない理由が
ありません。すべての責任は建築協定に違反した側にあります。
被告は、建物周辺に住む住民の精神的苦痛等どこ吹く風とばかりに営業を続けて
います。しかし、臭気、油煙、深夜に及ぶ嬌声、車のエンジン音等の被害は継続し
ていますし、福岡での深夜の飲酒運転によるこどもの死亡事故のような、団地内、
周辺での重大事故の発生も心配でなりません。
建築協定は、住宅地としての良好な環境保持を目的として、土地の所有者等の全員
の同意で締結されており、また、後からここに転入して来る者にも、広く法律同様の
効力、第三者効を持たせるために、熊本市長が認可し公告しています。建築協定の
改正は、新規締結時と同様に一人残らず全員の同意が必要であるのにも関わらず、
被告の行為はこれを抜きに、実質的に土地の用途の変更を行うものであり、建築協定
の存在そのものを否定するものです。
この一連の身勝手な行動に、他の協定者住民はただ指をくわえて見守るか、泣き
寝入りをするしかないのでしょうか。民主主義の世の中で、こんな不法が許される
はずがありません。飲酒運転をしながら「事故を起こしていないからいいじゃないか」
というのと同様の被告の主張をとうてい認めることはできません。このような
建築協定が納得できないのであれば、被告はこの地を選ばなければよかっただけの
ことではないでしょうか。
幸い、建築基準法は、建築協定に、違反者が出た場合の措置を定めておかなければ
ならないと規定し、これに基づく秋津レークタウン建築協定は、違反行為に対して、
工事中止を請求し、当該行為を是正させ、当該土地の所有者等がこれに従わなければ、
強制債務履行をさせるべく建築協定運営委員長が裁判所に提訴をしなさい、
と規定しています。まさに、今回の事件を想定していたのではないかと思うくらい
よく準備されている規定だと感じています。
すばらしい建築協定があるにもかかわらず、私たち住民は、今までこのような事件に
遭遇しなかったため、建築協定の存在を空気のように、今の環境が当然であるかの
ごとく思って過ごしていたことも事実です。建築協定は、建築基準法等の法律を
補完するという大きな役割を持ち、秩序を保って運用されており、全国を見ても
本件ほどあからさまな、根本的な協定破りに至る事例はありません。事実上、日本
でも初めてと言える裁判ではないでしょうか。この判決は「熊本の建築協定違反事
件」の判例、教訓として、歴史に残る重要なものになるに違いありません。
裁判長。どうか、20年にわたり、住民全員で守り続けてきた秋津レークタウン
建築協定を、たった一人の土地所有者の行為のために、有名無実なものにはしない
でいただきたいのです。これが、私たち四百数十名の協定者の願いであり、全国の
建築協定関係者の願いでもあります。
どうぞよろしくお願いいたします。
終わります。ありがとうございました。
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