訴 状
平成20年6月20日
熊本地方裁判所 御中
〒861-2105 熊本市秋津町秋田3442-40
(送達場所) 原 告 佐 藤 上
(送達受取人) 電 話 096-365-6218
FAX 096-365-6218
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〒861-2105 熊本市秋津町秋田****-**
原 告 * * * *
〒861-2105 熊本市秋津町秋田****-**
原 告 * * * *
〒861-2105 熊本市秋津町秋田****-**
原 告 * * * *
〒861-2105 熊本市秋津町秋田****-**
原 告 * * * *
〒861-2105 熊本市秋津町秋田****-**
原 告 * * * *
〒861-8601 熊本市手取本町1-1
被 告 熊本市
被告代表者 熊本市長
幸 山 政 史
処分行政庁 熊本市建築主事
* * * *
建築確認処分取消請求事件
訴訟物の価格 算定不能
貼用印紙額 13,000円
第一 請求の趣旨
1 熊本市建築主事****が,平成19年7月20日付市建第******-2
号をもって株式会社************代表取締役****に対してなし
た建築確認処分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
第二 請求の原因
1 事件に至る事実経過
(1) 原告らは熊本市秋津町秋田字古屋敷(以下「秋津レークタウン」という。)の
住民である。秋津レークタウンは昭和49年,熊本勤労者住宅生活協同組合(以
下「住宅生協」という。)が当時の現況沼湿地,面積約21ヘクタールを取得し,
後に住宅地として大規模開発したものであり,全区域が都市計画法(昭和43年
法律第100号。平成19年11月30日施行前のもの。以下,本訴状中すべて
同じ。)第7条に定義された都市計画区域の市街化調整区域に存している。
(2) 住宅生協は秋津レークタウン開発のため昭和60年6月28日,熊本県知事に
都市計画法第29条の規定による開発行為に係る許可の申請をし,同年11月7
日,県知事は許可処分をなした。この際開発許可の条件として「建築協定を速や
かに締結すること。内容にあたっては本職と協議をすること。」が付された。(甲
第1号証,第2号証)
(3) 開発工事が完了し,昭和63年8月12日,検査が実施され,同年9月16日
付県知事から開発行為に係る検査済証が交付された。この際にも「開発許可の条
件として,建築協定を締結することを付しているが,建築協定が廃止となった場
合においても以下の条件を遵守すること。」との条件が付加され,都市計画法上
の用途地域の定められていない開発区域に適用する建築制限が指定された。(甲
第3号証)
(4) 以後,秋津レークタウンの土地,住宅が分譲販売され,住居地区(以下,秋津
レークタウン建築協定の定義に合わせ「B地区」という。)に原告ら住民が,ま
た商業地区(以下,同様に「A地区」という。)に店舗等が入居した。A地区の
店舗用地には平成2年より株式会社ニコニコ堂所有のスーパーマーケットが建築
され営業していたが,同社が経営不振に陥り撤退することとなり,平成16年1
2月14日,同土地,建物は売買により株式会社*********(平成17
年5月9日,株式会社************に商号変更)代表取締役***
*(以下「訴外会社」という。)が所有するところとなった。スーパーマーケッ
トは引き続き,訴外株式会社****が入店し同業を営業している。
(5) 訴外会社は,右スーパーマーケット敷地内の客用駐車場内に飲食店建物(以下
「本件建物」という。)の新築を計画し,平成18年5月15日,熊本市建築主
事に建築基準法(昭和25年法律第201号)第6条1項に基づく建築確認を申
請し,同年6月7日付市建第******号をもって建築主事****より同法
第6条4項に基づく建築確認処分がなされた。また,直後7月28日付市建第*
*****-1号をもって同建築主事より飲食店建物の焼鳥屋部分についての建
築確認変更処分がなされた。(以下「当初建築確認」という。)
(6) 建築基準法及び秋津レークタウン建築協定の規定に基づき,土地の所有者等協
定締結者の代表である建築協定運営委員長から,本件建物は「建築協定に定めら
れた土地の用途制限,床面積制限等に違反している。」として,平成18年10
月24日,違反建物撤去請求事件の訴え提起がなされた。(平成18年(ワ)第
1113号。熊本地方裁判所において民事係争中である。)
(7) 当初建築確認に係る工事は本訴え提起時に至るも完了していないが,訴外会社
は特定行政庁(市長)より本件建物の一部の仮使用承認を得て,自ら焼鳥屋を営
業中である。さらに平成19年7月7日,訴外会社は同建物内工事未着手部分に
ついて,テナントの中華料理店開業のための建築変更確認申請をし,平成19年
7月20日付建築主事****より本訴えに係る建築確認変更処分(以下「本件
建築確認」という。)がなされた。本訴え提起時,中華料理店も営業している。
(8) 住民ら(審査請求人は原告らのうち,佐藤上及び****の2名)は,「右 (2)
において開発許可の前提条件として締結されている建築協定があり,かつ同 (3)
においては県知事の指定した公法上の建築制限が定められており,このいずれに
も違反している。」ことから,本件建築確認は違法かつ不当であるとして行政不
服審査法(昭和37年法律第160号)及び建築基準法に基づき,平成19年8
月13日,熊本市建築審査会(会長****)に建築審査請求を申立て,建築確
認処分の取消しを求めた。(甲第9号証)建築審査会は,平成19年9月13日
付裁決(裁決書の送達は翌14日)で,原告らの請求を棄却した。(甲第10号
証)これを不服として原告らは,平成19年10月13日,国土交通大臣に再審
査請求を申立てた。(甲第11号証,甲第12号証)
(9) 住民ら(審査請求人は原告らのうち,佐藤上,****,****及び***
*を含む6名)は,右建築審査会の審理の経過及び裁決で初めて知ることとなっ
た建築主事が行った当初建築確認の審査の過程において,開発区域における建築
制限に係る市長の処分(建築確認申請に係る建築物についての都市計画法上の許
可権者である市長が「同法第42条1項ただし書きの許可を要しない。」と判断
した行為)は違法,不当であるとして,平成19年11月12日,熊本市開発審
査会(会長****)に行政不服審査法及び都市計画法に基づく開発審査請求を
申立て,市長の処分を取消すよう求めた。(甲第13号証)開発審査会は,平成
20年1月11日付裁決(裁決書の送達は翌12日)で,原告らの請求を適法で
ないとして却下した。(甲第15号証)
(10) 以上の経過より,開発審査会の裁決に対する行政事件訴訟法(昭和37年法
律第139号)第14条による出訴期限が迫っている(裁決があったことを知っ
た日の翌日から6ヶ月。処分後1年を経過すると訴えを提起できない。)こと,
しかし国土交通大臣に請求した再審査の申立て後3ヶ月を経過しても裁決がない
こと(同法第8条2項1号)から,熊本市を被告として,本訴状に被告代表者及
び処分行政庁を記載(同法第11条各項)し,建築確認処分の取消しを求めるも
のである。
2 建築主事と市長の都市計画法上の権限範囲の解釈の誤り
右事実経過中, (8) 及び (9) において,建築主事のする建築確認の都市計画
法に係る適合審査のうち,同法第42条1項(開発許可を受けた土地における建
築等の制限)及び同項ただし書許可について,建築基準法上の審査権限を持つ建
築主事と,都市計画法上の開発及び建築に係る許可権限を持つ市長との権限範囲
について,市長,建築主事,各審査会における裁決の論旨との間には決定的な対
立と矛盾がある。すなわち,建築主事・建築審査会は「建築主事の確認処分は,
建築基準関係規定の適合・不適合について判断をなす裁量余地がない羈束行為で
あり」「都市計画法上の課題には許可証の添付若しくは,所管の判断がなされて
いるかどうかを確認するに足りる。それが適法・不適法については建築主事の審
査の範囲外であり,建築審査会の判断の対象外である。」として,「市長の『許可
不要』との判断がなされていることを確認した。」から処分は適法である,とい
うものである。対して,市長・開発審査会は「建築主事は,建築物に関する建築
基準関係規定の適合性のみならず,建築物の敷地等に関する都市計画法上の適合
性についても審査権限を有し」「市長の許可・不許可の処分がない場合は,建築
主事もまた本件建築物が都市計画法第42条1項に適合しているかどうかを判断
する権限を有している。」として,「建築主事が建築確認を適正かつ迅速に行える
よう必要な資料の一つとして提供された(市長が『許可を要しない』と判断した
行政組織内部の行為であり)本件行為に処分性は認められない。」から審査請求
人らの請求が不適法だとしたのである。
右各行政庁の論旨は,原告らの「都市計画法第42条1項ただし書き許可を得
ていない建築物は違法である。」「市長が『許可を要しない』と判断したのは違法
である。」との審査請求に全く応えておらず,では一体果たして当初建築確認に
おいては,法律に規定された審査を誰が責任をもってなしたのか不明なのである。
さらに,中華料理店建築変更計画に係る本件建築確認においては,土地の用途の
適合性について建築主事は審査すらしていないという,重大な瑕疵を見のがして
いる。実際,訴外会社の許可申請に対し,市長は自ら何らの処分も伴わない「許
可を要しない。」との判断をなし,「処分をしていないのだから行政不服審査法に
いう処分はない。」と主張するのでは,住民等は許可を要するかどうかの市長の
判断に誤りがあっても,これの是正を求める途を全く閉ざされることとなる。
結局,原告らは両審査会の審理・裁決には法令解釈の誤り等があり,不服があ
るが,行政事件訴訟法上の裁決の取消しの訴えは敢えて提起せず,「本来,開発
許可を受けた開発区域内での建築物の建築のために必要な,都市計画法第42条
1項のただし書き許可が欠落しており,それでは結果的に建築主事のなした建築
確認に瑕疵がある。」との事実を主張して,行政処分の取消しを求めることのほ
うが合理的と判断した。(判例:平成17年3月23日横浜地裁。地下室マンシ
ョン訴訟。開発許可を経ずになされた建築確認処分取消請求事件。本訴えと同趣
旨により開発許可の要・不要を裁判所が改めて判断の上,原告勝訴。確定。)
3 建築主事のなした建築確認変更処分の解釈の誤り
本件建築確認は,建築主事・建築審査会の論旨では「飲食店建物だから,当初
と用途は変更なく変更部分だけを確認審査すればよく,用途の審査は要しない。」
と言うのであるが,これは建築確認変更処分の本旨を根本から誤解している。
建築確認変更処分(本件建築確認)は,既にされた建築確認処分(当初建築確
認)を前提としてはいるが,本件建築確認の審査をするに当たり,当初建築確認
が建築基準法令に適合するものであることを所与の前提として,変更に係る部分
についてだけ法令への適合性を判断すればよいというものではない。(建築主事
のほとんどの建築計画事案の審査実務において,用途について精査をする必要が
ないという実態があるとしても,やはり)変更に係る部分及びその余の全体につ
き,改めて法令への適合性を判断し,建築主事が確認できた場合に当初建築確認
は新しい本件建築確認に更新され,生まれ変わり,当初建築確認は消滅すると解
される。もしそうでなければ,同一建築物に複数(本訴えに係るものでは3)の
建築確認処分が存在することとなり,また変更部分を含めた建築物の用途等,本
訴えのように建築主事が審査しなかった部分に違法があっても,住民等が是正を
申立てる途が閉ざされることとなり,まことに奇妙な行政処分のありようとなる。
まただからこそ,建築基準法第6条1項には,建築主が建築主事から建築確認を
受けなければならないことについて,「当該確認を受けた建築物の計画の変更の
場合も…同様とする。」との規定が盛り込まれている。本件建築確認では,土地
の用途が真に「建築基準法令の規定に適合」しているのか否かを,誰がどのよう
に審査・判定するかの肝心な観点が抜けているのである。
付言すると,訴外会社は係争中の民事裁判において,本件建物に病院ないし診
療所を入れる計画を主張し,あるいはテナント募集を業態を問わず現在も行って
いる。スーパーマーケット用地を分譲住宅にして販売,利益を得ることが土地購
入の目的だったというのでもあり,これらは建築協定に違反するだけでなく,都
市計画法第41条2項,第42条1項並びに第79条等の建築基準(用途制限等)
に従わない法令違反である。
4 本件建築確認の違法性(用途制限違反の見のがし)
そもそも,市街化調整区域の秋津レークタウンにおける本件建物の計画された
土地の用途については,昭和60年11月7日付熊本県指令建第438号の県知
事の開発行為の許可に際して付された条件(甲第1号証)に「建築協定を速やか
に締結すること」があり,この建築協定(甲第2号証)には「スーパーマーケッ
ト用」と,明確な用途の規定がある。
一方,昭和63年9月16日付建第開第14号の開発完了検査済証に付された
文書(甲第3号証)に「建築協定が廃止となった場合においても…」との条件の
記述があるが,これは,「建築協定を締結して,規定された用途制限等を尊重,
厳守すること」であり,しかし,「建築協定は私人間の契約であり,住民の(過
半数の)同意により廃止される可能性があり,この土地は市街化調整区域で用途
地域の定めがないから,万一協定が廃止となった場合でも,無秩序にならぬよう
以下の条件を最低基準として遵守すること」と,県知事が指定しているのである。
これら県知事が指定する建築協定あるいは建築制限は,根拠法令の明示はされ
ていないものの,県知事が法令に基づかない指定をなすことはあり得ないことか
らして,これらを遵守しなければ都市計画法に違反することとなる。(例えば熊
本市徳王町の開発登録簿調書(甲第4号証)を見れば,同法第79条による開発
時の条件として「建築協定を締結すること」や,同法第41条1項に基づき市長
が指定した建築制限の詳細が記載されており,この解釈が正しいことがわかる。)
ところが市長は,この部分の「建築協定が廃止となった場合においても」という,
未だ起きていない仮定を優先適用し,ここで「店舗」との建物の用途条件を付し
てあり,店舗が認められているのだから飲食店についても問題ない,と即断した
のである。つまり,県知事の指定のうち,先の条件の「建築協定」はあくまでも
私人間の契約であり,後の工事完了時の条件を「建築協定の有無に関係なく,こ
れが最低基準」であると曲解し,これにより店舗,飲食店は都市計画法第42条
1項の開発行為に係る予定建築物の用途に変更がない,と判断したというもので
ある。(敷地を分割して飲食店を新築するのだから,既設建物のスーパーマーケ
ットの変更計画ではないのに,このような解釈をするのは失当ではある。)(建築
審査会裁決書最後尾に添付された「開計発第00531号」。甲第10号証)
建築行政にあたって,一般的に建築協定が建築基準法第6条4項の建築基準関
係規定の適合性確認の際の対象法令でない,ということを過剰に意識し,建築協
定という「書面」条項に規定された重要な用途制限を軽視して,県知事の付加し
た開発許可の条件を曲解し,スーパーマーケット用地に本来建築が許されない飲
食店の建築を許すこととなった。これは適用する基準の誤謬であり,結果的に建
築確認審査に瑕疵があることとなり,違法であるから,取消しは免れない。
なお,万一,仮に市長の(土地の用途に関する)解釈が正しいとしても,県知
事の指定で「店舗の床面積は1,500㎡以下」とも定められており,既にスー
パーマーケット部分の床面積は2,032.81㎡で,これを超過している(甲
第16号証)のであるから,新たな建物を建築することは違法となる。ここで,
県知事が開発計画区域全体を鑑みて開発許可をなし,付した条件において,店舗
用地全体の地積の7,816.26㎡に対して指定された,床面積1,500㎡
の都市計画法上の建築制限をのがれ,かつ,原則「一敷地に一建築物」の建築基
準法施行令(昭和25年政令338号)第1条1号の定義に合致させるためだけ
の「仮想分割線」を引いて敷地を分割し,ここに新たな建物を建築することが認
められているとは解せないから,(もしそのようなことが認められるのなら,そ
もそも都市計画法に基づいて県知事が指定する床面積の規制は何の役割も持たな
いことになる。)から,なおも本件建物は違法性を免れない。
5 本件建築確認の違法性(「許可を要しない。」との市長の判断の違法)
本件建物は,都市計画法第34条10号イの規定により,県知事の許可を得て
開発された,市街化調整区域である秋津レークタウン内に建築計画されたもので
ある。市長は,訴外会社の建築確認申請の事前調査にあたって,都市計画法第4
1条2項,第42条1項及び第79条等の適合性を,当該土地の属性,環境等の
重大性に鑑み十分の注意をもって慎重に調査,処理すべきであった。
建築審査会の審理において,市長は「庁内合議により係る許可を得る必要がな
いと判断した」と強弁するが,(そもそも市長の許可権限に属するものなのだか
ら,判断根拠を得るための合議が必要なのか,について疑問が残るがそれでも)
実際には右庁内合議はしておらず,何時どのような手続きをもって当該処分をな
したのか,判断の根拠を証する一切が不明である。
また,原告らと開発景観課との話合い(甲第7号証)でも,開発許可を所管す
る同課において十分な検討はなされておらず,ただ担当者が「ここに居酒屋くら
いあってもいいと思って即刻判断した。」と言うのでは,あまりにお粗末で恣意
的に行政行為をなしたと指摘されてもしかたがない。行政手続法(平成5年法律
第88号)では,行政庁は審査や処分の基準を具体的に定め,かつこれを公にし
ておくよう努めること,が義務づけられている。この点,熊本市には判断のため
の明確な基準はないというのだから,行政手続法にも違反している。原告らから
の「許可を要しない。」と判断したことを証する次の関係書面の開示請求に対し
て,市長はすべて「不存在」を理由に開示を拒否している。(甲第14号証)
ア 「飲食店」に「焼鳥屋」が含まれることとした根拠を示す文書
イ 都市計画法第42条1項ただし書き許可の訴外会社の申請書
ウ 都市計画法第42条1項ただし書き許可が必要でないとした判断に係
る担当課における決裁文書
エ ウと同じく,関係各課部局との合議議事録,起案,決裁の一切の文書
許可申請者である訴外会社に対し,「許可を受けなくてもよい。」という行政上
の効果をもたらす重要な判断を,根拠もなくなした市長の行為は,開発審査会が
「行政不服審査法上の行政処分ではない。」として原告らの処分取消請求を却下
しても,依然として違法は違法であり,この判断を根拠としてなした建築主事の
建築確認には瑕疵があることになるから,取消しは免れない。
6 都市計画法第42条1項違反(開発許可に係る予定建築物ではない。)
市長(開発景観課)は,原告らとの話合いの中で,「建築指導課からの当該建
築物の事前の照会に際し,都市計画法第42条1項の当該開発許可に係る予定建
築物の用途の変更に該当しないから,即刻,ただし書き許可を要しないと判断し
た」としている。その判断根拠を再掲すると,
ア 昭和63年9月,県知事が開発行為に関する工事の検査済証を交付した際
に付した書面に「店舗」の用途との条件があり,飲食店は店舗である。
イ 都市計画法第34条1号の規定(当該開発区域の周辺の地域において居住
している者の日常生活のため必要な物品の販売,加工,修理等の業務を営
む店舗(以下「1号店舗」という。)に該当していると考え,「秋津レーク
タウンの中に飲食店,焼鳥屋,居酒屋くらいはあってもいいだろう。あま
り大規模な営業は駄目だが今頃は家族団らんで焼鳥屋に行くから,遊興飲
食店でも問題ないだろう。」と担当者が判断した。
ウ 他の市街化調整区域で飲食店(うどん店)を許可した前例がある。
エ 熊本市都市整備局発行の「開発許可申請の手引き」(以下「手引き」とい
う)は一般的な手続きが規定されているだけで,個々のケースには手引き
によらずに個別に判断している。
しかし,これでは正当,公正な根拠基準とは成り得ず,担当する職員の嗜好と
か恣意によって重要な行政決定がなされてしまう危険性が高い。全国的にも1号
店舗として焼鳥屋のような遊興飲食店を適用している例はない。仮に市長が主張
するように,当該土地に建築できる建築物が店舗,飲食店であると,曲げて解釈
するとしても,手引きにおいて,1号店舗の業種としては,総務省の定める日本
標準産業分類(平成14年3月改訂)による「一般飲食店」を基準にしているの
だから,料亭,居酒屋等と同じく「遊興飲食店」に分類される焼鳥屋は,1号店
舗には該当しない。
(日本標準産業分類(平成14年3月改訂)抜粋)
ア 「一般飲食店」 その場所で主として料理又はその他の食料品を飲食させ
る事業所及び主としてアルコールを含まない飲料を飲食させる事業
所(食堂,料理店等)
イ 「遊興飲食店」 一般大衆向けに,主として酒類及び料理をその場所で飲
食させる事業所(居酒屋,焼鳥屋等)
熊本市での前例として挙げているうどん店は,同法第43条1項の「開発許可
を受けていない」市街化調整区域での「自己の」「兼用住宅」という本件建物と
は別次元の例であり,しかもこれでさえも建築主に許可申請させ,許可証を交付
している。本件建物の許可申請を不要とするいささかの参考事例,判断根拠にな
るものではない。
また,本件建物は都市計画法第42条1項の予定建築物等以外の建築物の(熊
本市景観課のいう既設建築物の用途の変更ではなく)新築であり,したがって手
引きによる市街化調整区域における建築許可の手続きフロー(甲第8号証)で示
されているように,建築主は予定建築物以外の建築の許可手続き(同法第42条
1項ただし書き許可の申請を開発景観課に提出し,許可申請審査を受け,熊本市
開発審査会に付議され,答申の結果で認容されれば建築許可証の交付を受ける)
を行わなければならない。これを経ずになした行政の判断行為そのものが違法で
ある。
7 行政庁の開発登録簿の調製,登録義務違反
開発許可制度では,開発行為を規制するとともに,建築行為等(都市計画法第
37条,第41条,第42条,第43条)用途の変更(同法第42条,第43条)
を規制することになっており,このため開発登録簿を備えることによって,次の
ような目的を達しようとするものとされている。
ア 一般の第三者に対して開発行為の内容,種々の制限の内容を知らしめ,違
反行為の防止を図ると同時に,一般の第三者が土地の取引に際し不測の損
害をこうむることのないようにその保護を図る。
イ 建築基準法の確認に際して,開発許可等の効果を確保するため,特定行政
庁が常時容易にその内容を把握する。
ところが,熊本市の他の開発区域,例えば徳王町等(甲第4号証,甲第5号証)
と秋津レークタウンの開発登録簿調書(甲第6号証)を見比べるとわかるように,
県知事がなしたいずれの法に基づく建築制限も記載がされていない。都市計画法
第46条及び第47条による登録簿の調製,内容の登録は行政庁の義務行為であ
るから,記載されてあるべき同法第41条,第79条等の制限事項がすべて空白
なのは明らかに法令遵守の義務違反と言わざるを得ない。
秋津レークタウンの建築基準について,市長(都市景観課)は,市街化調整区
域である開発区域の用途制限等,法的根拠も示さず,勝手に「第二種中低層住居
専用地域の基準が適用される。」と主張し,県知事が指定した建築基準について
は無視し,「開発後は市街化区域同様の扱いをする。」と驚くべき解釈をしている
のは,明らかに行政の裁量権の濫用と言わざるを得ない。これらは違法にも開発
登録簿がでたらめに長年放置されていることが主要な原因であると考えられる。
原告らは,本訴状においては,県知事と市長のなした行為についてその当時の
処分権者を明確にするために分けて記述したが,「指定都市,中核市又は特例市
の指定があつた場合における必要な事項を定める政令」(昭和38年政令第11
号)により,指定日(熊本市は平成8年4月1日)以降,県知事がなした開発許
可,工事検査済証の交付,開発登録簿への登録等,すべての行政行為は,市長が
したこととみなされることとなっている,ことは十分承知している。
第三 本訴えに係る建築物の概要
本件建物の概要は,当初建築確認申請書によると,次のとおりである。
(1) 敷地地名地番 熊本市秋津町秋田字古屋敷****番**の一部
(2) 都市計画区域 市街化調整区域 (3) 用途地域 指定なし
(4) 建ぺい率・容積率 40%・80% (5) 用途 飲食店
(6) 敷地面積 1091.64㎡ (ただし,これは「仮想分割線」を引いた
敷地分割によるものであり,元の店舗用地地積は7,816.26㎡)
(7) 延床面 396.06㎡ (8) 構造 鉄骨構造
(9) 階数 地上1階地下0階 (10) 高さ 5.0m
第四 訴訟手続,原告適格,訴えの利益
1 行政不服審査請求手続を経ないで本訴えを提起することについて
原告らのうち,佐藤上,****は,建築審査会及び開発審査会に審査請求を
申立てた。****,****は開発審査会に審査請求を申立てた。また,**
**,****は両審査会に審査請求を申立てていない。
行政事件訴訟法第8条ただし書きでは,処分の取消しの訴えは,(法にその旨
の定めがある場合は)当該処分についての審査請求に対する審査会の裁決を経た
後でなければ提起することができないとし,同条2項2号で,処分,処分の執行
又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき,ま
た同項3号で,その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるときには,裁決
を経ないで訴えを提起することができることと規定している。
訴外会社は,本件建物の建築当初から,テナントを募集しながらそれが決まる
都度,建築主事に建築変更確認を繰返し申請していくという手法により工事を進
めている。(平成19年9月5日,建築審査会公開口頭審査調書より(処分庁:
建築主事****)「本件の当初の確認申請時は,テナント契約予定として計画
が未定の部分が存在しておりました。このような場合は,テナント誓約付確認処
分を行っております。つまり,工事途中においてテナントが決定したら確認の変
更手続きを申請し,確認を受けてから工事を続行する旨の誓約を交わしています。
これは法第6条の手続き規定の趣旨を鑑み,法の目的を担保する合理的な運用と
して準用しているものであります。」)
このような「準用」の法令上の当否はさておき,(この「準用」において,建
築主事の建築確認変更処分の本旨への重大な誤解があることは既に指摘した。)
これでは原告らは,近隣に住んでいてもいつ何時,訴外会社からテナントが決定
したとして建築計画の変更確認申請が建築主事に出されるか,またその建物がど
んな内容のものか,建築工事がいつ完了するのか,も予知できない。(「テナント
募集」の写真。甲第17号証)このような状況で,当該建築確認処分がなされた
ことに気づいた後に,右審査前置主義による建築審査会への審査請求を申立てて
も,1ヶ月の審査期間中(建築基準法第94条2項)に工事が完了すれば訴えの
利益は失われてしまう(判例:昭和58年(行ツ)第35号。最高裁第二小法廷判
決)のであるから,行政事件訴訟法第8条2項2号による,行政不服審査を前置
しなくても直接訴えを提起することにつき「緊急の必要」がある。
また,たとえ建築審査会に審査請求を申立てても,平成19年8月13日付佐
藤上,****が申立ててされた建築審査会の審理内容,裁決を一読すればわか
るように,住民の審査請求申立てについての審査請求者適格が問題にされている
わけでなく,専ら本訴えの原告らと同一の審査請求者の主張の本体に対して,真
正面から請求が棄却されているのであるから,佐藤上,****にとって変わっ
て別の審査請求者が同じ審査庁に審査請求を申立てても,異なる裁決が期待でき
るものではない。(これは開発審査会に関しても同様のことが言える。)したがっ
て,審査会での審査請求人らの主張したところは,本訴えの原告らの取消請求と
同趣旨であるから,行政事件訴訟法第8条2項3号による,行政不服審査を前置
しなくて直接訴えを提起することにつき「正当な理由」がある。
2 原告適格について
行政事件訴訟法第9条は,「処分の取消しの訴えは,当該処分の取消しを求め
るにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができる。」と規定してい
る。「法律上の利益」とは単に具体的な権利のみならず,法的に保護された利益
ないし法的保護に値する利益と解され,これを行政庁の行為により侵害され,ま
たは必然的に侵害されるおそれがある者は,その行為の相手方たると第三者たる
とを問わず,その取消しを求めることができるということである。
建築基準法第6条に定める建築確認制度は,同法第1条に定める「国民の生命,
健康及び財産の保護を図り,もって公共の福祉の増進に資すること」を目的とす
るものであり,そのため同法では,建築物の敷地,構造,設備及び用途に関する
最低の基準を定めている。また一方で,秋津レークタウンのような開発区域,市
街化調整区域に建物を建てる場合には,都市計画法やこれに基づく規則,条例,
あるいは本訴えで原告が重視している県知事,市長等の法令に基づく指定等,強
い制限,規制等を定めて,無秩序な市街化を防止することとしており,これも同
法第1条に定める「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り,もって国土の均衡
ある発展と公共の福祉の増進に寄与すること」が目的である。
したがって,国民,住民は基本的にこれらすべての基準,規範等が行政が介在
することにより違反なく守られ,そのことにより,住環境ができる限り高度に維
持されることを信じて疑わず,期待して毎日を生活しているのである。
さて,建築基準法第6条による建築確認処分の対象となつた建築物の周辺,近
隣居住者は違法な確認処分によつて健康,保健衛生上不断の悪影響を受け,ある
いは火災炎上等の危険に曝されるおそれがあるときは,法律上当該確認処分の取
消しを訴求する当事者適格を有するとされる。
本件建築確認にかかる焼鳥屋の営業によって,原告らは自らの嗜好と関係なく
鶏肉等肉類の焼ける臭気,油煙に日常的に曝されることとなり,これを避けるた
めには快い通風をこれも日常的に犠牲にするしかなくなり,健康,保健衛生上不
断の悪影響を受けることとなる。これらの悪影響は,本件建物と原告ら個々の住
居の位置,本人の体調等によっても受ける程度は異なるが,町内で全般的に冬場
は北西の風が吹き,南側に広がっている秋津レークタウンの大部分の地域に悪影
響が広がる。梅雨の時季は油を含んだガスが水の分子に押さえ込まれ拡散できず
地表面近くに滞留する。夏場の夕方には涼しく心地よいよしずや風鈴に打ち水等
の日本情緒等は,臭気のため望むべくもない。久しぶりの南風と思って窓を開け
ようとすると,ベタッと油煙で粘る防虫ネットに気が滅入る。洗濯物に臭いが付
着し,よく観るとパソコン液晶画面にも,家の外壁にも黒い油煙が薄くへばりつ
いている。また,遊興飲食店が深夜まで営業をしているから,飲酒した客が嬌声
を上げたり,代行車,タクシーの客待ちの運転手の話し声が大きいなど,住居専
用地域に建てた筈の自分の家で安眠できないという状況がある。(焼鳥屋の向か
いの原告****家に同居の訴外****「申出書」。甲第19号証)
現在,市長の仮使用承認を得て営業している飲食店の右事実を綜合すれば,本
件建物の工事完了後においては,原告らの所有し居住する住居に近接した場所に
(遊興を含む)飲食店群を控えることとなり,日常の保健衛生上不断の悪影響を
受け,深夜の騒音で不眠に悩まされ,ないしは業務用大出力火器からの火災等の
類焼等不測の危難に曝されるおそれがないとは断言できない。
したがって,原告らは本件建物の敷地の近隣居住者として,本件建築確認の審
査における建築主事の瑕疵,違法等を理由に本件確認処分の取消しを求める法律
上の利益があるので,すなわち原告適格を有する。
なお,行政事件訴訟法第9条2項において,「裁判所は,処分又は裁決の相手
方以外の者について『法律上の利益』の有無を判断するにあたって,処分又は裁
決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的
並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとさ
れ,この場合において,法令の趣旨及び目的を考慮するにあたっては,法令と目
的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし,
利益の内容及び性質を考慮するに当たつては,処分又は裁決がその根拠となる法
令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが
害される態様及び程度をも勘案するものとする。」とされている。
3 本件建物の工事の進捗について(訴えの利益の実存)
建築工事の完了は建築基準法第7条1項による建築主からの検査の申請(完了
の届出)の有無,及び同条7項による建築主事の建築主に対して交付される検査
済証をもって工事の完了を確認できる。ただし,訴外会社は,テナントを募集し
ながらそれが決まる都度,建築主事に建築変更確認を繰返し申請していくという
手法により工事を進めており,テナントは未だ募集中なのであるから,工事は未
完了であることは明白である。
右確認のため,平成20年6月11日,所管する熊本市建築指導課に口頭で問
い合わせたところ,「工事は完了していない。」との回答であった。これの証明の
ため熊本市に工事の検査済証の開示請求をしたところ同月19日,同証は「不存
在」との回答文書を得た。(甲第20号証)
証 明 方 法
甲第1号証 昭和60年熊本県指令建第438号「開発行為の許可」
(県知事が開発許可の条件として建築協定の締結を求めた証明)
甲第2号証 秋津レークタウン建築協定(抄)(町内協定区域図を含む)
(建築協定には明確にスーパーマーケット用地と定めている証明)
甲第3号証 昭和63年建第開第14号「開発行為に関する工事の検査済証」
(県知事が建築協定が廃止された場合でも,として開発完了後の都市
計画法に基づく最低基準を定めていることの証明)
甲第4号証 熊本市徳王町における開発登録簿調書(抄)
(都市計画法41条,79条等に基づく建築制限や用途地域等が定め
てある場合の開発登録簿の登録記載例)
甲第5号証 熊本市内の開発区域における用途指定をした地域一覧
(市長が市街化調整区域でも用途地域を指定していると主張するので,
原告らがその例を示すよう求めたことへの回答の地域の一覧)
甲第6号証 秋津レークタウンの開発登録簿調書(抄)
(秋津レークタウンでは,用途地域等は定められておらず,市長の説
明が誤りであることの証明。また,県知事の許可条件等を登録すべ
きところ,登録原簿への記載義務違反であることの証明)
甲第7号証 開発景観課との話合い内容
(開発景観課が根拠のない恣意的判断で1号店舗を許したことの証明)
甲第8号証 「開発許可申請の手引き」による建築許可の手続きフロー
(熊本市自らが定めた手引きの手順に則らず行政をなしたことの証明)
甲第9号証 熊本市建築審査会への建築審査請求書(抄)
甲第10号証 熊本市建築審査会裁決書(謄)
甲第11号証 国土交通大臣への再審査請求書の配達記録票
(原告らが国土交通大臣に対して再審査請求を有効に行ったことの配
達記録郵便による発送の証明)
甲第12号証 国土交通大臣への再審査請求書(抄)
甲第13号証 熊本市開発審査会への開発審査請求書(抄)
甲第14号証 原告らからの市長が「許可を要しない」と判断したことを証する書
面を開示請求したことに対する,該当文書の「不存在」を示す市長
開示請求拒否決定通知書
(重要な行政判断や処分を担当者が一切の決裁なしでなしていること
の証明)
甲第15号証 熊本市開発審査会裁決書(謄)
甲第16号証 ニコニコ堂土地付建物の競売物件情報(熊本地裁平成16年3月)
(既存のスーパーマーケットの建物面積が2,032.81㎡であり,
県知事の指定する床面積制限1,500㎡を超えていることの証明)
甲第17号証 建築確認済証に並んで設置された「テナント募集中」看板等の写真
(本件建物の建築工事の手法の証明及び建築工事が未だ完了していな
いことの証明)
甲第18号証 原告らの住居と本件建物の関係位置図
甲第19号証 原告****宅に同居する訴外****の「申出書」
(当初建築確認及び本件建築確認に係る建物=飲食店の営業によって
進んでいる周辺住民の住環境の悪化の具体的事例による証明)
甲第20号証 原告らからの本件建物の工事の完了検査済証の開示請求に対する,
該当文書の「不存在」を示す市長の開示請求拒否決定通知書
(本件建物の工事が完了していないことの証明)
添 付 書 類
甲号証の写し 各1通
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