秋津レークタウンのスーパー前の飲食店建物は建築協定違反です。建築・営業に反対しています。
また、この建物に対する行政の建築確認処分の審査には重大な瑕疵があり、取消を求めています。

平成20年9月9日に原告らが熊本地方裁判所に提出した準備書面です。
(被告の平成20年7月25日答弁書(このHPには未公開)への反論です。)
(印刷をなさりたい方はこちらより.PDFファイルをダウンロードしてください。なお、本訴状に添付した甲号証
による書証は個人情報を含みますし、ご希望を検討させていただき回答しますので、一応ご連絡ください。)


 平成20年(行ウ)第9号 建築確認処分取消請求事件
 原   告   佐 藤    上 外5名
 被   告   熊本市

             
準 備 書 面 (1)
                                  平成20年9月9日

 熊本地方裁判所民事第2部合議B係 御中

                    〒861-2105 熊本市秋津町秋田3442-40
          (送達場所)   原   告   佐 藤    上
                            電 話 096-365-6218
                            FAX 096-365-6218
                            mail noboru@laketown.pc-door.com

                              同     * *  * *

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 被告の答弁書(本案前の答弁)に反論する。

第一 はじめに
   被告は本案の主張は述べず,原告らの訴えを直ちに却下することを裁判所に求
  めているので,原告らとしては,本案前の被告への反論と密接に関連する本案事
  件についての概略をここにまず述べておく。
 1 本訴えの提起に至った背景
   訴状で述べたように,原告らの居住する秋津レークタウンは都市計画法第7条
  3項で「市街化を抑制すべき区域とする。」と定義される市街化調整区域にあり,
  かつまた,同法第29条により県知事の開発許可を得て開発された開発区域にあ
  る。市街化調整区域及び開発区域には,他の市街化区域等と同様に建築物を建築
  する上での様々な制限・規制が加えられ,あるいは建築基準法による最低基準等
  が適用されることによって,「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り,もって
  国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与」し(都市計画法第1条),「健康
  で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと並びにこのためには
  適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られるべきことを基本理念」とし(同
  法第2条),そして「国民の生命,健康及び財産の保護を図り,もつて公共の福
  祉の増進に資する」こと(建築基準法第1条),が高らかに謳われているのであ
  るから,この法律の目的と理念が,どの町,どの区域にも,国民の誰にも適用さ
  れるものであることは当然である。
   都市づくりは,都市計画法第18条の2の定めにより,市町村は,公聴会等を
  開催して住民の意見を反映させ,議会の議決を経て定められた市町村の建設に関
  する基本構想並びに都市計画区域の整備,開発及び保全の方針に即し,市町村の
  都市計画に関する基本的な方針(以下,「都市マスタープラン」という。)を定め,
  これを公表し,都市計画を進める上ではこの都市マスタープランに即したもので
  なければならない,とされている。熊本市でも,「都市マスタープランは,平成
  37年を目標年次(推計人口72万人)とした都市づくりに関する長期的な指針
  としての役割を持っています。総合計画基本構想の目的に沿って都市づくりの目
  標,都市空間の将来像,並びに取り組みの基本方針を定めます。法的な規制力は
  ありませんが,本市が定める個別の都市計画の基本的な方針となります。市民の
  皆さんの長期的な生活設計や事業者の事業企画の指針として活用されることで,
  将来の都市空間のあり方に関する共通の認識を育てていくことが期待できます。
  概ね10年毎に必要な修正を行う見込みです。」「土地利用や都市施設の体系,交
  通基盤や市街地の整備,都市景観や都市防災について基本的な考え方や大まかな
  方向性を示しています。総合計画の取り組みと連携し,施策面での整合を図って
  いきます。国や県の計画,市の関連分野の計画などの整合を図っていきます。」
  として策定している。(〔参照〕熊本市ホームページ http://www.city.kumamoto.
  kumamoto.jp/masterplan/index.html
   秋津レークタウンは昭和62年に第1工区(市営秋津団地。ただし原告らには
  この集合住宅の居住者はいない。),昭和63年に第2工区,平成5年に第3工区
  の合計約21ヘクタールに及ぶ大規模開発工事が完了し,都市計画法第36条3
  項の定めにより県知事が当該工事が完了したことを公告して以降,今日までこの
  開発区域及び周辺地域について具体的な都市計画が立てられたことはない。つま
  り時代の変遷,社会の変化とともに都市計画区域内の線引きの見直しをしなけれ
  ばならない等ということもなく,良きにつけ悪しきにつけ昭和60年の開発許可
  時及びその後の工事完了の公告時のまま,住居専用の閑静な住宅地として存在し
  推移してきたものである。近い将来に特に何らかの都市計画が策定される予定も
  ないのは,小冊子「熊本市の都市計画(2005年版)」や,右都市マスタープ
  ランに添付されている土地利用構想図及び市街地整備方針図(甲第21号証)を
  見ても,秋津レークタウン周辺地域は空白になっていることで明らかである。
   都市計画法の法律構造は,都市計画区域のそれぞれの区域に法律で規制をかけ,
  県知事が開発行為を許可してその規制を取外す,許可なく開発行為や建築物の建
  築をしてはならない,開発許可があってその工事が完了した後も当該開発区域で
  は原則として開発許可時に県知事が指定している建築規制を守り,かつ同許可時
  の予定建築物以外の建築物の建築はできないこと,となっている。「適正な制限
  のもとに土地の合理的な利用が図られるべきことを基本理念」とする同法の根本
  の考え方である。
   熊本市周辺では20数年前,特に団塊の世代向けの住宅需要の旺盛・急激な高
  まりによって,住宅用地が不足し農地や湿地帯を埋立てる等の開発が計画され,
  市内の市街化調整区域が住宅地として開発されるということが起きてきたのであ
  り,このような社会の動向に連動して,もし真に必要なのであれば,熊本市が都
  市計画法第21条2項の規定において準用する同法第18条1項に定める都市計
  画の変更手続きにより,都市計画区域の市街化区域と市街化調整区域の線引きの
  見直し,あるいは用途地域の変更等,諸整備を進めるべきであった。これを怠り
  ながら,行政現場の実務担当者が机の上で,「開発工事が終わればもう市街化調
  整区域でなく市街化区域として扱う。」とか,用途地域は定められていないのに
  「第二種中高層住居専用地域」だとか,さらには「これは市長の裁量」だと,素
  人の住民を前に当然とばかりに,強引に行政の判断・処理をなしたものである。
   本件は,このように熊本市が計画的に進めなかった町づくりの重い行政課題を
  地域住民に負わせるという極めて無責任な姿勢に原因がある。熊本市は都市マス
  タープランの中で,「居住地における市街地整備の方針」(低層住宅居住ゾーン)
  として「既に面的整備が完了した地区については,地区計画,建築協定,緑地協
  定等の誘導により,地域の特性を生かしたまち並み形成を図ります。」としてい
  る。実際,市街化区域と比して市街化調整区域は,本来「市街化を抑制すべき区
  域」であることから法的な制限が十分とは言えず,ためなればこそ,(国土交通
  省の開発許可運用指針等の側面援助も得ながら)地区計画,建築協定,緑地協定
  等によって補完的に厳しい制限を実効せしめるとの施策が各地方の行政で行われ
  ているのである。つまり,秋津レークタウンのような用途地域の定められていな
  い土地の区域にとっては(用途地域の定められた一般的な市街化区域での,いわ
  ゆる建築基準法の最低基準への上乗せルールとしての性格よりも)県知事が開発
  許可の必須条件としたことでもわかるように,正真正銘「建築基準は建築協定こ
  れしかない」というべき生命線なのである。しかるに熊本市は,実際にはまった
  く逆の行動をとっており,今般の建築協定違反に対する民事訴訟の判決で,前代
  未聞の建築協定に違反する建築物の建築計画に対し,「自治会長の同意書を添付
  するよう指導した。」と,熊本市建築指導課の関与が認定されている。(熊本地裁
  平成18年〔ワ〕第1113号建物撤去請求事件。平成20年6月26日判決2
  5頁16行目及び26行目。福岡高裁へ控訴中)
   なお参考のために,建築基準法第4章に基づき,熊本市建築協定条令(昭和4
  6年条例第10号)を自ら定め,申請に基づいて認可し公告することとなってい
  る建築協定制度が如何に形骸化しているか,つまり熊本市が開発許可及び建築行
  政に関して法令に基づかない,杜撰な執行をなしていることの事例として,熊本
  市徳王町での平成12年の開発行為について,都市計画法第79条の定めによっ
  て市長が開発(変更)許可に際して付加した「建築協定の締結」の許可条件が無
  視され,当該建築協定は現在に至るも締結されていないことが明らかであるので,
  この証明(既に提出した甲第4号証,及びこれに係る甲第22号証)を提出する。
  しかし,甲第4号証の添付文書の別添10開発許可条件(法第79条)には「2
  熊本市と別途,建築協定及び緑地協定を締結すること」とあるが,土地の所有者
  等が熊本市と協定を締結…とは,建築協定の何たるやを理解しているのか,許可
  権者である市長が元々本気でこの許可条件を付したものかどうかさえ疑わしくな
  る。(むろん,建築協定は土地の所有者等同士が締結するものである。)
   しかし,原告らが第一回口頭弁論で述べたように,本訴えの争点はつまるとこ
  ろ,事件に係る基本法令である都市計画法及び建築基準法の解釈の違いである。
  そこで,本準備書面においても,また本案審理においても今後度々現出するであ
  ろう両法令の重要な解釈をまず次の 2 で主張する。また後述の「原告適格」と
  も密接に関連している本案で詳述すべき建築審査会及び開発審査会と本訴えの提
  起に至るまでの関係と事実経過の概略を 3 で述べる。
 2 都市計画法と建築基準法の法解釈について
   本訴えに関連する基本法令は都市計画法及び建築基準法であるが,立法に至る
  経緯が異なることからか,国民の申請に対して県知事等の「許可」制を基本とす
  る都市計画法と建築主事等の「適法性の確認審査」制を基本とする建築基準法に
  は根本的な理念の相違があり,この点で被告の解釈には重大な誤りがある。特に
  都市計画法の定める制限にしたがうべき場合に,建築基準法上の技術基準のみを
  みて判断するという混同の事例が甚だしい,というのが本訴えの原告らの主張の
  骨格である。
   都市計画法においては,県知事の許可の内容にはその工事の完了後も,「将来
  ともに」拘束されるので,時が経ようとも係る最初の許可の内容が極めて重要な
  意味を持つ。これに対して,建築基準法では,建築確認処分,建築確認変更処分,
  完了検査等の「処分のたび毎」に建築関係規定に適合しているかどうかの建築主
  事による審査がされ,いわばそれに合格すれば「済証」が交付され,一件が落着
  する(行政庁自身が取消しをしない限り)ことになる。具体的には都市計画法第
  42条1項の開発区域での「予定建築物」とはあくまで建築物という固有属性を
  指しており,その解釈に当たって同法第34条の1号店舗として判断する場合,
  X店とY店が同じ物品販売店であっても異種商品の販売であれば,また建物が別
  棟となればそれぞれが同法42条1項ただし書き許可を受けなければならない。
  つまり,開発許可時に開発申請者が提出した「予定建築物(の用途)」が開発許
  可を許可権者が検討するに当たって,また許可後も,開発工事の完了後も極めて
  重要な意味を持つこととなる。また,用途地域が定められた土地のように,予め
  認められた業種だから許可不要であるとか,原則的に,X店が許可されたのなら
  Y店は許可不要ということにはならないし,土地の区画の分割も建築基準法の技
  術基準では問題なくても,都市計画法第41条1項の開発許可時の建築物の形態
  制限等によって厳しい規制がある。また開発区域は工事完了の公告があった後も
  開発区域であり,工事が完了すれば開発区域ではなくなるとか,法による保護・
  制限が消滅するというものではない。(これら開発行為に係る制限等を法的に証
  明担保するために同法第46条及び第47条において開発登録簿への登録が行政
  庁に義務づけられているが,開発登録簿の管理ができていないことは訴状で述べ
  たとおりである。)
   このように,都市計画法上の県知事の「開発許可,建築許可及び工事完了検査
  (済証の交付)」と,建築主事の審査権限による建築基準法上の「建築確認及び
  工事完了検査(済証の交付)」の関係は似て非なるものであり,原告ら素人には
  難解であるが,しかし本訴えでは重要な争点になるから,ここに最高裁民事判例
  集より開発許可処分等取消請求事件での判決中,補足意見として提示されている
  ***裁判官の文章が理解しやすいのでこれを引用する。
   (引用)………開発許可と検査済証の交付との関係について検討する。前述 
   したとおり,知事等は,開発許可に係る工事が完了した旨の届出があったと 
   きは,当該工事が開発許可の内容に適合しているかどうかを検査し,その検 
   査の結果当該工事が当該開発許可の内容に適合していると認めたときは,検 
   査済証を交付することとなっている。このように,検査済証の交付という行 
   政処分は,開発行為に関する工事が,先行する開発許可という行政処分の内 
   容に適合するかどうかを検査した上でされるものであるため二つの行政処分 
   は,不可分的に関連を有するものとしてとらえることができる。      
    この点,建築基準法においては,建築確認は,当該建築物の建築計画が建 
   築関係規定に適合するかどうかという観点からされ(建築基準法6条),工 
   事が完了したときは,建築主事は,その工事が建築確認の内容に適合してい 
   るかどうかを検査するのではなく,改めて,当該建築物及びその敷地が建築 
   関係規定に適合しているかどうかを検査し,これに適合していることを認め 
   たときは検査済証を交付する(建築基準法7条)という手続を採っているた 
   めこの二つの法律が定める手続を比較すると,そこに差異があることは明ら 
   かである。(最高裁第二小法廷平成5年9月10日判決・民集47巻7号4 
   955頁,開発許可処分等取消事件判決〔棄却〕での〔少数〕補足意見)  
 3 建築審査会及び開発審査会と本訴えの提起の関係と事実経過の概略
   原告らが訴状で述べているように,原告佐藤上及び同****(以下,「建築
  審査経由者」という。)が審査請求した建築審査会の審査の内容,裁決によって,
  建築主事が建築確認変更処分の解釈を誤り,本件建築確認の審査をする上で都市
  計画法上の課題,特に土地の用途に係る適合審査(以下,「土地用途の適合審査」
  という。)をしていないことが明白になったのであるから,本訴えの趣旨からす
  れば本件建築確認にこの重大な瑕疵がある事実のみをもって処分の取消しを求め
  るのも訴えの有力な一方法ではあるし,これは実に明快である。(本件建築確認
  〔市建180***-2号〕は建築計画の変更によるものであり,この前提とし
  て当初建築確認〔市建180***号及びこれの変更の,市建180***-1
  号〕があったことが歴史的事実としてはあるが,これらは本件建築確認によって
  消滅している,との原告らの主張は訴状のとおりである。)
   しかし,建築審査会における建築審査経由者の反論書(甲第23号証)に対す
  る同審査会公開口頭審査の弁明(甲第24号証),及び裁決書(甲第10号証)
  等で明らかなように,建築主事は,本件建築確認は「当初建築計画の変更に係る
  もので,土地の用途等については審査の対象外である。」ことを主張しつつ,(そ
  の約1年前の)当初建築確認の際に所管の開発景観課からの報告として,次のよ
  うな「ことの報告がされております。」と陳述した。
   ① (開発許可時の県知事の許可条件及び同工事の検査済証交付時に添付された
    建築規制については)許可証が出ており,一応許可済みである。
   ② 区画(敷地分割)については,開発許可の基準等に関する条例に則って区画
    変質してあるから問題ない。
   ③ 建築物の形態制限として,建ぺい率,容積率,高さ,この辺を,用途地域の
    「第一種低層住居専用地域」内の基準として扱う。
   原告らからみれば,建築主事の右陳述はすべて事実ではなく,これらはそれぞ
  れ次のとおりであって,信じられない処分行政庁としての認識であった。
   ① 本件建物の飲食店用途の店舗について建築許可の処分はなされていない。
   ② 土地の区画形質の変更という開発行為自体がないではないか。
   ③ 秋津レークタウンの本件建物のA地区には用途地域は定められていない。
   さらに,同審査会も裁決で本件建築確認での土地用途の適合審査が欠けている
  ことには触れず,むしろ「都市計画法上の課題には許可証の添付若しくは,所管
  の判断がなされているかどうかを確認するに足りる。それが適法・不適法につい
  ては建築主事の審査の範囲外であり,建築審査会の判断の対象外である。」と断
  じた上,それでも「当初建築確認の際に市長の『許可不要』との判断がなされて
  いることを同審査会において確認した(裁決書最後尾に添付の『開景発0005
  31号』をもって)から本件建築確認処分は適法である。」と裁決した。
   なお,これらの被告の「当初確認の変更であるから審査を要しない。」との主
  張の事実は,当時の新聞報道でも明らかである。(乙第5,6号証)
   そこで,建築審査経由者を含む住民らは念のため,またやむを得ず,当初建築
  確認がなされた際の土地用途の適合審査に係る判断が誰によってどのようにして
  なされたのかは開発区域に居住する住民の利害にとって極めて重要であることか
  ら,開発許可を所管する開発景観課に出向いて調べたところ(甲第7号証),右
  建築審査会の建築主事の陳述とは大きく異なる次のような説明を受けた。
   ① 都市計画法第42条1項ただし書き許可について,建築主から申請があった
    が,計画建物は同法第34条1号に認められた店舗(以下,「1号店舗」と
    いう。)に該当すると即断し,市街化調整区域に隣接する飲食店を許可した
    前例があり,従来から熊本市都市建設局の「開発許可申請の手引き」(以下,
    「手引き」という。)によらずに個別に判断してきた,の三点から所管課と
    して「許可は不要」と判断し,即日申請者及び建築指導課に回答した。
   ② 「許可は不要」との建築基準法施行規則第60条による証明書(以下,「6
    0条証明」という。)は市は交付していないが,建築確認事前調査報告書の
    チェック欄を埋めることによって足りる。
   ③ スーパーマーケット駐車場に仮想境界線を引いて区画分割をすることは,土
    地に余裕があり,敷地を分割して建てれば法的に何ら問題はない。
   ④ 用途地域は(開発登録簿に記載はされていないが)B地区が第一種低層住居
    専用地域に準ずるとの県知事の指定があること及び建物の現状からA地区は
    「第二種中高層住居専用地域」に該当するから,この土地での店舗・飲食店
    の建築は問題ない。
  …さらには,
   ⑤ 開発工事が完了すると,その区域は開発区域ではなくなる。法律等による開
    発区域としての保護・制限の適用がすべてなくなり,都市計画法施行令第2
    7条の開発区域内での購買施設を含む公益的施設の確保の義務の制限はなく
    なる。同定めは開発許可の時点での制限に過ぎない。
   ⑥ 市として,開発後は市街化調整区域でなく一般の市街化区域として扱う。
   ⑦ これら(①,④,⑤及び⑥)の判断は行政の裁量の範囲である。
   ⑧ 住民がスーパーマーケットがなくなること等心配される気持はわかるが,行
    政としてはA地区の駐車場の土地で建築申請が出されれば断る根拠がない。
    住民の懸念を払拭できるいい策が見つからない。
  というもので,これまた住民らには仰天の信じがたい姿勢であった。
   また,住民らはこの説明に対しても,次のように事実をもっての反論がある。
   ① 「手引き」では,「1号店舗」に遊興飲食店が含まれるとは解せない。全国
    的にも「1号店舗」として焼鳥屋を認めた例はない。そもそも都市計画法で
    は,(用途地域が定められた地域と異なり)用途が同じであれば建築可能と
    いう法律構造にはなっていない。少なくとも開発審査会への付議,審査,答
    申を経て(甲第8号証),許可の可否の判断をすべきである。「以前に許可し
    た」ことと「だから今回は許可(手続き)を要しない」のは同義ではない。
   ② 建築基準法施行規則第1条の3の定めにより提出を義務づけられた「60条
    証明」は建築主からの申請に対応する処分であり,原則必要な許可を例外的
    に「要しない」と判断した証明書の交付を省略するのは違法である。行政行
    為の処分性及び責任の所在を隠蔽することとなり,国民の不服申立て等の機
    会を奪うことになっている。
   ③ 駐車場の区画分割はたとえ建築基準法の定める技術基準に合致しても,都市
    計画法の目的に基づき県知事が指定している建築物の形態制限等に違反して
    いるから許されない。(開発許可に当たり,県知事は開発申請者から提出さ
    れた総面積212,601.01㎡の全開発区域に対して〔甲第6号証〕,
    都市計画法第33条に定める道路,公園,調整池等の公共施設等の有無及び
    同法施行令第25条によるこれらの技術的細目等とともに,同令第27条に
    定める必要な教育施設,医療施設,交通施設等,購買施設その他の公益的施
    設が,それぞれの機能に応じ居住者の有効な利用が確保されるような位置及
    び規模で配置されているかどうかを吟味検討した結果,中でも住民の日常生
    活に密接に影響する購買施設については,予定されたスーパーマーケットの
    敷地7,816.26㎡に対して,客用駐車場のスペース,周囲のB地区の
    第一種低層住居専用地域の居住環境,住民との住分け等総合的に勘案した上
    で「店舗の床面積は1,500㎡以下」の規制を指定したものであるから,
    この開発許可時の規制を無視することは違法である。)
   ④ 秋津レークタウンは市街化調整区域で用途地域が定められておらず,同法第
    42条1項の定めにより開発許可に係る予定建築物以外の新築が原則許され
    ないのであるから,例外としての同項ただし書き許可のない建築物の建築は
    違法である。
   ⑤ 開発区域は同法第36条3項の工事完了公告があった後でも,消滅するもの
    ではなく,同法第41及び第42条等に同公告後にも適用される開発区域で
    の建築制限が定めてある。(この開発後の建築制限の例外としての建築許可
    を含めて,広義の「開発行為」「開発許可」とされている。)また,③で述べ
    た同法施行令第27条に定める20ヘクタール以上の大規模開発区域(秋津
    レークタウンは該当する。)内での住民の日常生活のための「購買施設」を
    含む公益施設の確保の義務規定も工事完了公告後に消滅することはない。国
    土交通省の指針(国総民第9号平成13年5月2日国土交通省総合政策局長
    通知=開発許可制度運用指針Ⅲ-6-10)でも,「(8)特に,地区計画や
    建築協定の策定を伴う開発行為であって他の土地利用規制との調整を了した
    ものについては,開発区域の特性にふさわしい良好な環境が将来にわたって
    保持されるものであることから,法第34条第10号イの運用については,
    特段の配慮を行うことが望ましい。」として,国は開発区域での住環境の維
    持に気を配っており,都市計画法及び建築基準法の目的のためにこそあるこ
    れらの定め,国の指針を行政が無視することは許されない。
   ⑥ 市街化調整区域はあくまで同法第7条3項の定義による「市街化を抑制すべ
    き区域」であり,これを市街化区域とみなして行政をなすのでは都市の健全
    な発展と秩序ある整備を図ることを目的とする都市計画法の根幹に関わる違
    法である。行政が線引きの見直しが必要だと考えるのなら,都市計画の変更
    等,都市計画法の定めにしたがってなすべきが当然である。
   ⑦ 一住民にはない圧倒的な強い行政権,広い範囲の裁量権を有する市が,違法
    な自らの行為までも「裁量だ」と主張するのであれば,原告ら住民には正に
    「泣く子(お上)と地頭には勝てない。」のであり,公序良俗に反する。
   そこで,原告佐藤上,****,****,同****(以下,「開発審査経
  由者」という。)及び訴外2名の計6名は,市長のなした「許可は不要」と判断
  した処分の取消しを求めて開発審査会に審査請求をしたものである。
   しかし開発審査会は開発審査経由者の請求を「『許可を要しない』との市長の
  判断は行政不服審査法でいう処分性を有しない行為である。」として本案の判断
  をすることなく却下した。(甲第13~15号証)
   右経過で,原告らは,①建築主事が土地用途の適合審査をせずになした本件建
  築確認はそのものが違法であること,もしくは,②当初建築確認の端緒となった
  行政の判断,すなわち開発区域であり,市街化調整区域であり,用途地域の定め
  のない区域であり,県知事が開発許可時及び工事の検査済証交付の際に指定した
  建築規制のある区域である秋津レークタウンの,土地の用途に関する行政の判断
  ・処理等の行為は違法であるから,これに依拠して建築主事がなした本件建築確
  認の瑕疵を主張し,本訴えを提起して処分の取消しを求めることとした。
   しかしもしくは原告らは,行政の裁量に基づく行為であるとの右開発景観課の
  説明及び開発審査会での弁明の中での被告の主張があるので(たとえば市が都市
  計画の線引きや用途地域の変更を住民説明会を開く等の適正な手続きを経て進め
  ているような場合の最終決定段階では,行政の裁量が毅然と機能するというべき
  であろうが,右経過の場合は法から行政の裁量への委任があるような事案でもな
  い。市街化調整区域を市街化区域として扱うとか,用途地域の定めがないのに漫
  然と,「第二種中高層住居専用地域」として扱う等,行政現場の実務担当者の法
  令解釈のミス,運用上の脱線と捉えているのであるが,そうは言っても住民にと
  ってはこれが将来にもわたりあまりに影響が大きい事柄なので),本案において
  同様の被告の主張がされるのであれば,これは明確な目的も住民への説明もなく
  裁量をなしたこととなり,行政の行為の合法性(本来は妥当性も)の立証義務が
  被告にあると解すべきである。そしてこれを放置することは社会通念に照らし著
  しく妥当性を欠くから,③行政事件訴訟法第30条に定める裁判所が判断できる
  行政の裁量権の濫用または逸脱に該当する,との主張をするしか一市民の原告ら
  には防御の手段がない。
   いずれにしても,本訴えは都市計画法に係る行政組織内部の一連になされた判
  断・処理の違法性,これに係る開発審査会に原告,被告双方から提出された審査
  請求書(甲第13号証),弁明書,反論書,口頭審査調書及び意見書等の主張が
  主な争点であり,その収斂するところが最終的な確認審査の職務権限を有する建
  築主事の本件建築確認という行政処分に対する取消請求ということである。
   よって,裁判所が本案審理をするにあたり,開発審査経由者が開発審査会へ審
  査請求をしたことにより知ることとなった行政の右違法性を原告らが主な争点と
  主張する以上,同審査会への審査請求,裁決を歴史的経過としても,またその新
  鮮な(賞味期間中に)審査の内容を本案で時機に即して原告らが証拠を示すべき
  であることから,都市計画法上の出訴期間中に訴えを提起した事実を訴状に明記
  したものである。直接的には,建築基準法第96条の定めによる「審査前置」と
  しての法的評価が与えられるものでないことは率直に認める。
 4 なお,被告が本件建物の撤去について言及しているので念のため付言するが,
  本訴えにおいて原告らは違法になされた建築確認処分の取消しを求めている。都
  市計画法第81条では,同法に違反した者に対し建物の除却を含めた是正措置を
  とることを命ずることができる旨の市長の監督処分権限が定めてあるが,原告ら
  は行政自身が違法な処分をなした結果生じた違反事案に市長がとり得る措置につ
  いて知識がない。もし原告らが勝訴した後でも,訴外会社がした建築確認申請は
  なお有効であるから,確認審査のやり直しあるいは適正な行政指導によって,改
  めて適法な処分を追求すればよいのであって,原告ら善良な市民としては,もと
  より都市計画法第3条2項の「都市の住民は,国及び地方公共団体がこの法律の
  目的を達成するため行なう措置に協力し,良好な都市環境の形成に努めなければ
  ならない。」ことを十分心得ており,だからこそ政令指定都市を目指そうという
  ような大都市にふさわしい,我が熊本市の正しい適法な行政執行を求めているこ
  とに特段留意いただきたい。

第二 原告適格について
 1 法律上保護された利益
   行政事件訴訟法第9条は取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項に
  いう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処
  分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵
  害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定
  多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが
  帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと
  解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,
  当該処分によりこれを侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当
  該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。
   そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を
  判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによること
  なく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内
  容及び性質を考慮すべきであり,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を
  考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその
  趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当
  該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の
  内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同
  条2項)。(最高裁大法廷平成17年12月7日判決・民集59巻10号2645
  頁。小田急線連続立体交差事業認可処分取消,事業認可処分取消請求事件)
   建築基準法第6条1項では,同項各号に掲げる建築物の計画が,同法施行令(昭
  和25年政令第338号)第9条に定める建築基準関係規定に含まれるもののう
  ち都市計画法に係るものとしては,同法第29条1項及び2項,第35条の2第
  1項,第41条2項,第42条,第43条1項並びに第53条1項に適合するも
  のであることについて確認することができなければ,当該建築物の建築等の工事
  をすることができないことと定めている。たとえば同法第41条1項では,県知
  事は用途地域の定められていない区域の開発許可をするに際し,当該土地に建築
  物の建ぺい率,高さ,壁面の位置その他建築物の敷地,構造及び設備に関する制
  限を定めることができる,として同条2項によりこれらの制限に反して建築して
  はならないというものである。(原告らが指摘する甲第3号証の「開発行為に関
  する工事の検査済証」に付記された秋津レークタウンのA地区及びB地区の県知
  事による建築制限の指定が,この第41条1項の定めによるものかどうか開発登
  録原簿に明記がないのではあるが〔これについては求釈明を申立てたい。〕,確か
  に同様の建築物の形態制限の指定が同付記の中に含まれている。)右形態制限は,
  建築基準法第3章のいわゆる集団規定(建築物の集団化によって形成される都市
  の防災,環境向上のため都市計画区域内における集団としての規定)において,
  建ぺい率については同法第53条,高さは第55条,壁面の後退距離は第54条,
  容積率は第52条,敷地面積は第53条の2というように仔細に対応して,市街
  化調整区域のような用途地域の定めのない区域にあっても,将来市街化地域に編
  入される場合にも混乱なく整合性がとられるべく定めてあるものと解される。あ
  るいはたとえば都市計画法第42条1項では,開発区域内においては,開発工事
  の完了後は,原則として当該開発許可に係る予定建築物等以外の建築物を建築し
  てはならないと定め,開発後の開発区域内での建築を事実上開発許可時に県知事
  が指定した基準によって厳しく制限している。
   これらは,都市計画法と建築基準法の各々の定めの綿密な連携により,①当該
  建築物と居住者の生命,身体の安全及び健康の保護を図り,②当該建築物周辺の
  建築物における日照及び通風等を良好に保つ等,周辺居住者の快適な居住環境を
  も確保するとともに,③地震,台風及び火災等により当該建築物が倒壊又は炎上
  するなど万一の事態が生じた場合に,その周辺の建築物と居住者に重大な被害が
  及ぶことのないようにするために定められたものと解される。
   そして,建築基準法が建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定め,第1
  条において,国民の生命,健康及び財産の保護を図ること等を目的としているこ
  と,さらに同集団規定によれば,右都市計画法の定めとの連携によるものだけで
  なく,周辺居住者の防災・避難,通行,騒音・悪臭,衛生,美観,プライバシー
  等に対する利益の保護をも定めていると解されることを鑑みると,結局建築主事
  のなす建築確認処分には,建築確認に係る建築物と居住者の生命又は身体の安全,
  健康及び財産を保護し,その建築等が市街地の環境の整備改善に資するようにす
  るとともに,当該建築物により阻害される周辺に居住する者の生命又は身体の安
  全,健康及び財産を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含
  むものと解される。
 2 環境被害
   訴状で述べたように,本件建物である遊興飲食店の風下に住む住民は臭気,油
  煙に日常的に曝され,(秋津レークタウンは全域で6,7月を除き北北西の風で,
  年間風配図では風向観測値の70%以上が「NNW」を示している〔甲第25号
  証〕。日変化でも焼鳥屋の営業が始まる夕方の凪から深夜にかけてはほぼ毎日陸
  風に変わる〔日中暖められた陸の温度が海より早く下がり,陸側から海側へ向か
  う毎秒数m/sの北~北東の風成分〕。),これを避けるために自宅の扉及び窓を
  閉じるしかなく通風を日常的に阻害され,家屋の汚損が発生し,遊興飲食店が深
  夜まで営業をしていることにより,飲酒した客の嬌声,客待ちの運転手の話し声
  等〔動画・録音。甲第26号証〕で安眠できないという,日常の保健衛生上不断
  の悪影響を受け〔住民の申出書。甲第19号証〕,ないしは外部に露出して設置
  された業務用LPガスボンベ〔現場写真。甲第27号〕及び大出力厨房火器から
  の火災等の類焼等不測の危難に曝されるおそれがある原告らは,建築確認処分の
  取消しを求めるについて法律上の利益を有する者として,本訴えにおける原告適
  格を有する。
   被告は,原告らに生じる不利益は住民一般が共通に受忍せざるを得ないもので
  あると主張するが,受忍限度の範囲内であるかないかの判断は,たとえば臭気,
  油煙に関して,行政たる被告がわざわざ2年以上も前の新築時の新品排煙ダクト
  の写真を示して弁解しなければならないようなものではなく,この間の脱臭・油
  煙フィルター等の清掃交換の頻度等の履歴も明らかにしながら,本案の問題とし
  て詳しく検討すればよいことである。
   ちなみに住宅地における臭気の浮遊に関する専門的な研究成果は少なく,僅か
  に災害救助犬の臭覚について,「臭気は数百mの水平範囲を地表から上下5~1
  0m程度の振幅で上昇・下降しながら漂う。雨天,気温が下降中で湿度が高い時
  は臭気の発生・滞留が著しい。」(日本災害救助犬協会監修の読本)等とされてお
  り,確かに梅雨時季には拡散速度が低下し顕著になることを体感する。しかし臭
  気の出現因子は複雑で,単に排気口を30m移動させたとか,北側に向けたから
  といって周辺の住民への影響が少なくなるかは疑問である。逆に外冷気に剥き出
  しのダクトを臭気,油煙を含む気体が30mも通過すれば温度が低下し,排気口
  から上昇拡散する能力も低下して低高度での水平浮遊範囲が拡大するし,およそ
  無限空間の単に北に向け排出することで南側にある住居の環境が改善されるほど
  の効果があるをいうには,いわば航空機のエンジン並みの大出力ででも排出しな
  い限り無意味である。この種の臭気の受け止め方は個人差があるが誰も慣れるこ
  とはなく,実際に本件建物から相当離れている原告佐藤上,同****の居宅で
  も2年前の焼鳥屋営業開始以降気になって仕方がないのである。つまり被告の証
  拠は観念的で科学的根拠に乏しく,被告らの受忍限度内だとする理由はない。少
  なくとも横浜市のような経験のある都市を教訓に,調理臭や他の悪臭も排気口等
  での臭気濃度,周辺の三点ポイント設定による臭気指数を採取する等,必要に応
  じて科学的な方法を本案で検討すればよい。本案審理では,他の環境被害を含め
  裁判所の現地の検証が必要かと思料する。
 3 違法な行政の判断・処理による被害・損害
   都市計画法(平成19年11月30日施行前のもの)第29条の定めによる開
  発許可の申請に際しては,その開発区域に建築等が行われる予定の建築物等の用
  途が申請書に記載され,その用途その他種々の条件から公共施設である道路,公
  園,排水施設の規模等が決定される(同法第33条1項2号,3号,4号等)。
  また,同法施行令第27条でも大規模開発区域では教育施設,医療施設,交通施
  設,購買施設その他の公益的施設が,それぞれの機能に応じ居住者の有効な利用
  が確保されるような位置及び規模で配置されていなければならない,とされてお
  り,国土交通省の指針(国総民第9号平成13年5月2日国土交通省総合政策局
  長通知=開発許可制度運用指針Ⅲ-6-10)でも,「(8)特に,地区計画や建
  築協定の策定を伴う開発行為であって他の土地利用規制との調整を了したものに
  ついては,開発区域の特性にふさわしい良好な環境が将来にわたって保持される
  ものであることから,法第34条第10号イの運用については,特段の配慮を行
  うことが望ましい。」として,国は開発区域での住環境の維持について各行政庁
  の特段の配慮を促している。
   秋津レークタウンには近接した市街地はなく,住民がこの町の中だけでも一応
  生活できる居住専用地域であり,このような地域で生活をしていく上で必要な右
  公共・公益施設等の確保の法令等の定めは,社会契約の形で保護されているもの
  と解される。市街化調整区域にある秋津レークタウンのA地区には用途地域の定
  めはなく,都市計画法第42条1項の定めによって「予定建築物」以外の新築を
  原則的に禁止し,例外的に許可を受けた場合にのみ建築物の建築が許されるとい
  う制限が機能している。これを熊本市は,「第二種中高層住居専用地域」として
  扱うとか開発工事の完了後は公益施設の確保義務はないとしており,このような
  違法な行政の判断・処理により公益施設がなくなる等,この開発区域の特性にふ
  さわしい良好な環境が保持されないとなると,住民は法律に保護された良好な生
  活環境が損なわれて生活が不便になるほか,当然不動産の価値は低下するから土
  地・建物所有者等の個々の財産をも保護されないこととなる。
   また,本件建物の建築主であり不動産の所有者でもある訴外会社は,今般の建
  築協定違反に対する民事訴訟の中で「住宅用地として分譲販売することを目的に
  購入した。」ことを一貫して主張している。熊本市が建築協定を軽視した上,重
  ねての違法な行政の判断・処理により右建築制限の機能が外されると,住民の生
  活に必要なスーパーマーケットがなくなるおそれがあり,保護された個々の利益
  が阻害されることになるから,秋津レークタウンに居住する者は本訴えにおける
  原告適格を有する。
   本件建物の土地は,元々右公益施設の購買施設(スーパーマーット)用地であ
  り,県知事も用途を「店舗」として指定している。(甲第3号証)その客用駐車
  場が本件建物の敷地面積である約1,000㎡,およそ普通車60台分狭くなり,
  飲食店営業中には結局客用の駐車スペースが90台分程度減少する。車社会の日
  本では駐車場が狭くなれば客は利用しにくくなり,必然的に客足が遠のく。結果,
  スーパーマーケットの営業継続困難から運営会社の撤退が懸念される。秋津レー
  クタウンから他の同種物販店は相当遠距離であり,また開発後20年が経過して
  今後住民の高齢化が進むことが予想されるが,特に高齢者にとって,日常の生活
  必需品等の店が生活圏内になくなると生活が不便というよりももう死活問題であ
  る。今後住民主導の町づくりを展望する上で,スーパーマーケット業者等とも共
  存共栄を目指していかなければならないが,その前になくなってしまえばすべて
  の住民にとって大きな痛手となり,法律で保護された利益を阻害される。
   熊本には「○○無田」等の地名が多い。この「ムタ」という地名は湿地を意味
  するが,秋津レークタウンも元々泥湿地で,高度な埋立て土木技術で施工したも
  のである。開発後20年の間,幸い大きな自然災害に遭っていないが,間近に布
  田川・日奈久活断層(予想マグニチュード7.6程度。30年以内の発生信頼度
  0~6%BPT)があり(甲第28号証),一たび大地震が起きれば浮船のよう
  な地下構造で液状化現象が起きやすい。また,台風や豪雨ともなれば周囲一帯が
  水没し,秋津レークタウンが孤島のようになるのを何度も経験している。県知事
  が開発許可をなすに当たり総面積約21ヘクタールの全開発区域に対して公園や
  店舗用地等の広いスペースを散在させ確保したのは,住民の生活のための購買施
  設の敷地としてだけでなく,自然災害時の防災避難場所としても重要だからであ
  る。秋津レークタウンの中でも,本件建物付近が最も地盤高があり,埋立基礎工
  事で地下の堅固な岩盤に達した唯一の場所で,豪雨,洪水,地津波等に見舞われ
  れば貴重な,場合によっては多数の住民の最後の避難場所となる。したがって,
  最低でも開発許可時に検討され県知事が指定した店舗の床面積制限による土地の
  スペースが確保されなければ住民の生命,身体の安全等法律上保護された利益が
  阻害されると解されるから,秋津レークタウンに居住する者は本訴えにおける原
  告適格を有する。
 4 裁判所が原告適格を判断するに当たり,生命,健康,財産を阻害されるおそれ
  があることを理由として建築確認処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有
  するというためには,その者の健康,財産が本件建物の建築によって直接阻害さ
  れ,又はそのおそれがあるという関係があることをもって足り,その阻害の程度
  が受忍限度を超えている否か,あるいは本件建築確認処分が建築基準法令の規定
  に適合するか否かといったことは本案の問題である。(最高裁第三小法廷平成1
  4年1月22日判決・民集56巻1号46頁。最高裁第一小法廷平成14年3月
  28日判決・民集56巻3号613頁。建築基準法に基づく許可処分等取消請求
  事件での最高裁における原告適格者判断での「受忍限度論」の否定。)

第三 原告佐藤上及び同****の出訴期間の徒過について
 1 再審査請求後に行われた訴えの出訴期間
   被告は,原告佐藤上及び同****が熊本市建築審査会の裁決の結果を平成1
  9年9月14日に知ったのであるから,平成20年6月20日に提起した本訴え
  は,行政事件訴訟法第14条3項が定める出訴期間を徒過しており,不適法であ
  ると主張している。
   行政がなした処分に対する国民の不服の申立てである審査請求と取消しの訴え
  との関係については,行政事件訴訟法第8条1項に定める自由選択主義の原則,
  またその例外である同項ただし書きに定める審査裁決前置主義が採られている。
  建築基準法は,第94条及び第95条に二段階の審査請求手続を定めるとともに,
  第96条に処分の取消しの訴えの提起は第一審というべき建築審査会の裁決を経
  た後でなければできない,との「第一審手続きの履践」を前提条件と定めている。
  しかし行政事件訴訟法の「審査請求」は,それがいずれの審査行政庁に対してさ
  れたのかによってとか,あるいは第一審の審査請求と第二審というべき再審査請
  求を区分してとか,どちらかに格別重みを付し差別して扱うとする定めはない。
  (最高裁第三小法廷昭和56年2月24日判決・民集35巻1号98頁,転任処
  分取消請求事件での再審請求の位置付け。最高裁第一小法廷平成7年7月6日判
  決・民集49巻7号1833頁,労災保険給付金不支給処分取消請求事件で再審
  査請求を経ずにした取消請求の訴えの可否の判示における審査請求の位置付け。
  〔類似判例〕最高裁第三小法廷平成10年12月18日判決・民集52巻9号2
  039頁,損害賠償請求事件で第一審の住民監査請求後直ちに訴えを提起できる
  のみならず,再度の監査請求をすることも許されると判示した上での,この第二
  審の監査請求をした場合の出訴期間の解釈。)
   原告佐藤上及び同****が本件建築確認処分の取消しを求め,「第一審手続
  きの履践」をしたことは明白であり,同裁決書(甲第10号証)にある教示のと
  おり,裁決を知った日から30日以内である平成19年10月13日に第二審の
  審査行政庁である国土交通大臣に対して適法に再審査請求をしたのであって,同
  大臣の裁決がなされれば,同法第14条3項の「裁決を知った日から6箇月を経
  過したとき又は当該裁決の日から1年を経過したときは,訴えを提起することが
  できない。」との定めが機能するのであり,右裁決が未だなされていない以上,
  出訴期間徒過の問題は生じ得ない。
   そもそも,行政不服審査法第1条は「国民に対して広く行政庁に対する不服申
  立てのみちを開くことによつて,簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を
  図るとともに,行政の適正な運営を確保すること」を目的に定めており,建築基
  準法第95条が不服を申立てる国民に「二審」を選択することを認めているのも
  この目的のために外ならない。また,審査前置の目的は司法による判断に先立ち
  行政自身に判断をさせることによって,一旦問題点を整理,洗い直して選別し,
  訴訟経済を図り,加えて行政の自己統制をも図るねらいがあるとされるところ,
  被告の主張のようだとすると,国民が「二審」を選択してこの審査前置の目的を
  より深めることができようという建築基準法の持つ重要な仕組みの存在意義を否
  定することとなる。したがって行政庁自身たる被告の主張には理由がない。
   もっとも,実態として国土交通大臣へ再審査請求をしても,この再審査には裁
  決の期限の定めはなく,数年経ても裁決がなされない事例も少なくない。そこで,
  原告佐藤上及び同****としては際限なく裁決を待つことかなわず,行政事件
  訴訟法第8条2項1号の「審査請求があった日から3箇月を経過しても裁決がな
  いとき。」により,あるいは同条3項の「当該処分につき審査請求がされている
  ときは,裁判所は,その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があった日
  から3箇月を経過しても裁決がないときは,その期間を経過するまで),訴訟手
  続を中止することができる。」等の定めに鑑み,「3ヶ月」というのは,およそ訴
  えを提起するに法が求めている妥当な期間であろうこと勘案し,さらに3ヶ月を
  加え待機した時点でなおも裁決がなされない故に本訴えを提起したのである。
 2 建築審査会裁決における教示の欠落
   仮に,建築基準法第95条に定める再審査請求には行政事件訴訟法第8条2項
  1号等が適用されないとしても,裁決書(甲第10号証)には,「国土交通大臣
  へ再審査請求をすることができる。」ことのみが教示されており,被告の主張の
  ように「裁決後は,取消訴訟の提起,再審査請求のいずれかを選択することも,
  また双方を行うこともできる。」のであれば,当然行政事件訴訟法第46条及び
  「熊本市行政不服審査法第57条1項及び行政事件訴訟法第46条の規定に基づ
  く教示に係る標準文例に関する規則」(平成17年熊本市規則第53号)の文例
  等に照らして,被告となるべき者及び出訴期間等を明示した上で「訴えも提起で
  きる」旨が,書面により審査請求人に正確に教示されていなければならない。
   右裁決の教示をよりどころにした原告佐藤上及び同****の解釈が万一誤り
  であったとするなら,このような片方のみの教示はむしろない方が誤りを生む危
  険性が低かったであろうことが容易に推測され,結果的に同教示は同原告らに対
  して仕組まれたトラップのようなものになるのであり,これが是認され救済方法
  がないとすれば著しく法的公平を欠くこととなる。結局,右裁決には近年改正・
  追加された(平成17年4月1日施行)行政事件訴訟法第46条1項の行政庁に
  課せられた教示義務を失念した違法があり,同項各号の重要な内容が欠落し教示
  の実質的意味を成していないのであるから,①同法第14条3項の「行政庁が誤
  つて審査請求をすることができる旨を教示した場合」の定めに準じて,すなわち
  国土交通大臣の再審査請求の裁決を知った日から6ヶ月,ないし裁決後1年,が
  出訴期間であると解すべき,あるいは,②同法第8条2項3号に定める「その他
  裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき」に該当すると解すべきである。
  (平成16年10月15日付,閣司本第153号で司法制度改革推進本部事務局
  長が各都道府県知事に通知した「行政事件訴訟法の改正の骨子と行政運営に当た
  っての留意点」〔甲第29号証〕の12頁11行目によると,「取消訴訟等の提起
  に関する事項の教示の制度に従って教示をしなかった場合や実際より長期の出訴
  期間を教示するなど誤った教示をした場合の処分の効力などについては,規定さ
  れていない。教示をしなかったり,誤った教示がされたとしても,そのことのみ
  を理由として,当然に,処分が取り消されるべきものとなり,あるいは無効にな
  るものではない。しかし,第46条により取消訴訟等の提起に関する事項の教示
  義務が行政庁に課されていることから,出訴期間を経過しても取消訴訟を提起す
  ることができる「正当な理由」があるかどうか(第14条第1項ただし書),被
  告を誤った訴えの救済がされる場合である原告が「重大な過失」によらないで被
  告とすべき者を誤ったときに当たるかどうか(第15条第1項),あるいは不服
  審査前置の定めがある場合に裁決を経ないで処分の取消しの訴えを提起すること
  ができる「正当な理由」があるかどうか(第8条第2項第3号),など訴訟要件
  を欠いた場合の救済の必要性の判断に当たって,教示があったかどうか,教示が
  適切なものであったかどうか,というような教示義務が守られたかどうかという
  事情が考慮されるものと考えられる。」と特筆し,行政運営上の留意点を内閣府
  から各行政機関に喚起している。)
 3 なお万一,右主張がすべて否定され,仮に原告佐藤上及び****の審査請求
  に係る出訴期間を徒過し,実質,審査請求を経由していないに等しいとされる場
  合であっても,本訴えの原告ら6名全員に,行政事件訴訟法第8条2項の,裁決
  を経ないで処分の取消しの訴えを提起することができる同項2号の「緊急の必要」
  及び同項3号の「正当な理由」がある。これらは原告ら全員に係ることであるか
  ら,次に一括して述べる。

第四 原告らが審査を経由せずに本訴えを提起したことについて
 1 「緊急の必要」がある。(行政事件訴訟法第8条2項2号)
 (1) 当初建築確認(市建第180***号及びその後の市建第180***-1号)
  により平成18年6月頃より建築工事が始まった本件建物の焼鳥屋部分は,平成
  18年8月8日付,建築基準法第7条の6第1項1号による特定行政庁(市長)
  の仮使用承認を得て営業を始めた。しかし建築工事は未だ完了していない。
 (2) 平成19年6月1日,いきなり本件建物で建築確認処分を経ずにテナントの入
  店に向けた改造工事が始まり,驚いた秋津レークタウン住民からの市建築指導課
  への告発によって当該違法工事を中止させた経緯があり(甲第23号証。建築審
  査会請求人の反論書4,5頁),町全体で住民は「何が建築されるのだろうか」
  「何時工事が終わるのだろうか」と,情報がもたらされず,前述の環境被害を日
  常的に受けながら,集団的な不安・強迫神経症(パニック)のような状況が継続
  している。建築主は建築変更計画に際しては改めて確認申請を出す,との建築主
  事と誓約を交わしており,違法工事は建築基準法第9条等で厳しく規制されてい
  るのにも拘わらず,一切の手続きも経ずいきなり工事を開始したのであるから,
  原告らの受け止める緊急の度合いはより強い。
 (3) 右違法工事中止直後,平成19年7月12日に改めて訴外会社より建築確認申
  請がされ,8日後の7月20日に本件建築確認処分が建築主事によりなされた。
  後日確認した建築確認変更申請書によれば,建築物の飲食店の業種は当時熊本市
  も把握しておらず,原告らの質問にも答えず,工事の完了予定日は同処分の日か
  らわずか11日後の同年7月31日であった。(甲第30号証)
 (4) 平成19年8月13日に原告佐藤上(建築協定運営委員会副委員長)及び同*
  ***(自治会副会長)が審査請求人として建築審査請求をした。この事実は8
  月25日付の「自治会だより」で秋津レークタウン住民に知らされた(甲第31
  号証)。これにより原告****,****,****及び同****は建築確
  認処分の取消しを求めて審査請求がされていることを初めて知った。しかし,本
  件建物の工事は進んで既に完了予定日を過ぎており,また実は完了を目指すもの
  ではなく,市長の仮使用承認を取付けることを前提としているとは住民の誰も知
  る由もなく,工事が完了すれば審査請求の利益もなくなり無駄となるのは明らか
  で(後日の訴えの提起を想定し「前置審査」を形だけでも出しておこう等との知
  恵が働くべくもなく)建築協定という住民全体の問題解決を目的にした進行中の
  審査請求に委ね,その行方を見守ることにしたのも無理からぬところである。(実
  際,工事の完了検査が審査会の審査中に行われることを聞き及び,審査請求人ら
  から市長,建築審査会長に執行停止を求めたほどである。しかし審査会の裁決直
  前の同年9月10日,市長より中華料理店のテナントへの仮使用承認がなされ,
  同店は営業を始めた。)
 (5) 被告の答弁のとおり,「緊急の必要」とは,たとえば審査請求を行ったとして
  もその裁決を待っているうちに工事が完了してしまい…というような場合をいう
  のであるから,本件のように審査請求をしたとしてもその時点ではもう工事が完
  了しているような建築計画で建築確認申請がされ,建築確認の処分がなされてし
  まっているような場合は,正に「審査請求人の権利の保護が図れなくなるような
  場合」そのものである。審査請求を行うことができるのに行わないまま審査請求
  期間を過ぎてしまった…のではないことは右経過から明白である。工事が2年に
  も長引いているのは住民のせいでもなく,営業中の建物が実は工事途中なのだと
  いうことは当時住民の誰にもわからなかったことで,常に審査請求をしても明日
  には工事が完了してしまうかもしれない強迫状態にあった(現在でも)のであっ
  て,他人は後講釈をいくらでも言えるが,当事者にとっては本件建物をそばに抱
  えながら毎日時々刻々「緊急の必要」が続いているのであり,ずっと自らの権利
  の保護がないがしろに放置されているのである。
 (6) 訴状で述べたように,訴外会社建築主は,本件建物の建築当初から,テナント
  を募集しながらそれが決まる都度,建築主事に建築変更確認を繰返し申請してい
  くという手法により工事を進めている。建築基準法では,「第一 はじめに」で
  述べたように,「建築確認は,当該建築物の建築計画が建築関係規定に適合する
  かどうかという観点からされ(建築基準法6条),工事が完了したときは,建築
  主事は,その工事が建築確認の内容に適合しているかどうかを検査するのではな
  く,改めて,当該建築物及びその敷地が建築関係規定に適合しているかどうかを
  検査し,これに適合していることを認めたときは検査済証を交付する(建築基準
  法7条)という手続を採っている。」ところ,工事完了の検査に当たっての土地
  用途の適合審査については,本件処分行政庁の建築主事の主張では,同審査を実
  質しないことは明白であり,違法な処分が重ねてなされることとなる。また,工
  事の検査済証が交付されれば訴えの利益はなくなるとの最高裁判例,さらに都市
  計画法第41条2項,同法第42条1項等に違反している事実があっても,行政
  庁自身が処分をなしたものに同法第81条による違反の是正の措置を命ずること
  はあり得ないから,原告らが失う利益の回復の機会は訴えによるしかなく,本訴
  えの提起は緊急を要する。
 (7) また,行政は市街化調整区域を市街化区域として扱うとか,用途地域の定めが
  ないのにこれを「第二種中高層住居専用地域」として扱うとしており,一旦この
  ような行政の判断がなされるとこれを取消す手段がない以上,違法状態が定着す
  ることとなる。このことによる開発区域内の住民が受ける損害は回復することが
  極めて困難になると言わざるを得ず,本訴えの提起は緊急を要する。
 (8) さらに,本件建物にはあと1件のテナントのスペースがあるので,訴外会社か
  ら将来,建築確認申請がされることが推測され(そうでなければ本件建物は永遠
  に工事が完了しない。),成行きとして,土地用途の適合審査はなされずに違法な
  建築確認処分が重ねてなされることとなる。この将来の建築確認処分がなされて
  から,建築審査請求を申立てて裁決を経た後に訴えを提起するとなると,本件建
  物のテナントの工事履歴からみて当該審査期間中に工事は完了してしまうことは
  確実であり,しかもこの審査会は同じ処分行政庁及び審査行政庁が関わるのであ
  るから,原告らが期待するような裁決は望めない。それでもその手続きをすべし
  (出直せ)と行政事件訴訟法が国民に強いているとは同法第8条1項の自由選択
  主義の原則的理念からして解せない。すなわち右状況は,同法第8条2項2号に
  定める「著しい損害を避けるための緊急の必要があるとき。」に該当する。
 2 「正当な理由」がある。(行政事件訴訟法第8条2項3号)
 (1) 原告佐藤上及び同****が審査請求人としてした建築審査会への審査請求の
  目的は審査請求書で,「…(審査請求をして取り戻し得るべし利益)は,特定行
  政庁が認可,公告した建築協定第1条(目的)に示すとおり『建築基準法第70
  条の規定に基づき,協定区域内における建築物の位置,構造,用途,形態又は建
  築設備に関する基準を定め,これを協定し,もって住宅地としての環境を高度に
  維持増進すること』であり,民法上の契約債務不履行者単一名からの善良な協定
  締結者約四百十余名分の債権の保全である。…」(甲第9号証)と述べている。
  このことから,これは秋津レークタウン建築協定区域一体としてのいわば運命共
  同体の地域住民である協定締結者による,行政への不服審査請求の申立てである
  ことは明白であった。訴外会社の建築協定違反を実質的に容認することとなる建
  築確認処分の取消しを求めているのであるから,原告らを含む建築協定者全員が
  一体的な利害関係を有し,実質的にみれば,その者のした審査請求は同時に訴訟
  提起者のための審査請求でもあると言えることを示している。つまり,被告が挙
  げる判例(最三小判昭和61年6月10日判時1210号51頁)で説示されて
  いるとおりの右「特段の事情」が存在しているのである。
 (2) このような建築協定や都市計画法施行令第27条等の定めによる公益施設の確
  保が問題になるような,いわば町全体の利害に関する審査請求や訴えの提起は,
  本来は町内自治会等がするのがふさわしいのであろうが,訴状でも挙げた判例(平
  成17年2月23日横浜地裁。〔平成15年(行ウ)第39号〕)では,自治会と
  いう団体の原告適格が認められるのは無理があり,個人が自己の受ける損害(法
  律で保護されるべき利益)を主張してあらそうしか手段がないと解される。平成
  19年8月25日及び同年9月25日発行の「秋津レークタウン自治会だより」
  (甲第31号証)では,審査請求者佐藤上及び同****が建築審査会に不服審
  査請求を申立てたことが掲載され,同内容からも住民の一体的な利害関係を元に
  発した審査請求であることが理解できる。事実住民の右審査請求に対する関心は
  高く,同年9月5日の公開口頭審査では傍聴席が満員で住民40余名が傍聴し,
  市の会場係員が10名ほどの入場を断ったほどであった。
 (3) 建築審査会の審査は,同裁決書(甲第10号証)及び同会議録(甲第32号証)
  によれば,本件建物と審査請求人らの住居の位置関係によって住環境の悪影響の
  程度を吟味したり,審査請求人適格あるいは右「訴えの利益」の主張が議論にな
  ることはなく,ましてや審査請求を不適法として却下(門前払い)をしたのでも
  ない。同審査会の審査は専ら建築主事の建築確認審査の権限範囲あるいは同審査
  会の守備範囲の検討に集中しており,正ににべもなく本案の真正面から「土地の
  用途が違法であるかないかの判断は建築主事の審査の範囲外であり,建築審査会
  の判断の対象外である。」と断じて否定しこれを堅持しているのである。被告は,
  原告****,****,****及び同****は,本件建物との位置関係に
  より悪影響を直接的に被る者として,原告佐藤上及び同****とは異なる主張
  を建築審査会にすることが可能で,同審査会が同一内容の裁決をするとは到底言
  えない,と主張している。しかし,原告らは被害による損害賠償を請求している
  ものでもなく,何よりも同審査会自身が,審査請求人適格をいうには,本案の審
  査に入るべし資格が審査請求人にあるか否かを審査会事務局に確認するのみで判
  断しているのであって(審査会会議録。甲第32号証),この審査経過,裁決を
  見守っていた原告****,****,****及び同****が,被告の主張
  するような審査請求を同じ審査会にしたとしても,期待するような裁決がなされ
  るとは到底言えない。
 (4) 以上のとおり,原告佐藤上及び同****が建築審査会へ審査請求をして裁決
  を受けたことは,審査請求の理由と本訴えの請求理由が一である限り,他の原告
  ****,****,****及び同****にも同一内容の裁決があったこと
  とみなすことができるから,本訴えの提起の前に裁決を経ないことにつき正当な
  理由がある。

第五 行政の裁量権の濫用又は逸脱について
   被告が裁量権を主張しているので,本案でもその主張がされるのであれば,本
  件では行政の裁量権の濫用又は逸脱があったものとして,行政事件訴訟法第30
  条の定めるところによって裁判所の判決を求めることとしたい。
   市街化調整区域を市街化区域として扱うこと,用途地域の定めのないA地区を
  「第二種中高層住居専用地域」として扱うこと及び都市計画法施行令第27条に
  定める大規模開発区域における公益施設の確保義務が開発の工事完了後は消滅す
  る等の行政の判断・処理については本来,都市マスタープラン等との整合性が考
  慮され,その公益上の必要性と,開発地域住民の受ける利害とのバランスが吟味
  されなければならないが,公聴会も開催されておらず原告らには判断材料が乏し
  く,行政たる被告に圧倒的な情報があるのであるから,被告にはこのような判断
  をして行政をなすことの公益性,優位性の論拠についての立証責任があるものと
  解すべきである。
   詳しい主張は,今後の本案の検討の中で必要に応じてすることとする。

                               以 上
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