熊市開審第 4 号
裁 決
熊本市秋津町秋田3442番地40
審査請求人 佐 藤 上
熊本市秋津町秋田*****
審査請求人 * * * *
熊本市秋津町秋田*****
審査請求人 * * * *
熊本市秋津町秋田*****
審査請求人 * * * *
熊本市秋津町秋田*****
審査請求人 * * * *
熊本市秋津町秋田*****
審査請求人 * * * *
熊本市秋津町秋田*****
補佐人 * * * *
処分庁 熊本市長 幸山 政史
審査請求人らが平成19年11月12日に提起した、処分庁が平成18年5月11日に
請求外株式会社************代表取締役****(以下「請求外会社」とい
う。)が、熊本市建築指導課に提出するために処分庁に申請した建築確認申請事前調査報告
書(以下「報告書」という。)に、熊本市秋津町秋田****-**(以下「本件開発区域」と
いう。)に建築される飲食店用途の建築物(以下「本件建築物」という。)は、都市計画法(昭
和43年法律第100号。以下「法」という。)第42条第1項に規定する行為(以下「建築許可」と
いう。)は、行政の公権力の行使たる事実行為に当たるとして、その取り消しを求める法
第50条第1項の規定に基づく審査請求について、次のとおり裁決する。
主 文
本件審査請求は、これを却下する。
裁 決 の 理 由
第1 当事者の主張
1 審査請求人らの主張
審査請求人ら(以下「請求人」という。)の主張は、審査請求書(意見具申を含む。)、
反論書、再反論書及び口頭審理における発言のとおりであるので、それをここに引用
するが、その要旨は次のとおりである。
(1) 審査請求に至った経緯
請求人は、昭和60年11月7日に熊本勤労者住宅生活協同組合(以下「生協」
という。)が都市の秩序ある整備を図るための都市計画法等の一部を改正する法律
(平成18年法律第46号)第1条の規定による改正前の都市計画法(以下「旧法」
という。)第34条第10号イに基づき当時の開発行為の許可権者である熊本県知事
の開発許可(熊本県指令建第438号。以下「本件開発許可」という,)を受けて開発
行為(以下「本件開発行為」という。)がなされた開発区域内に居住する者であり、本
件行為により建築された本件建築物に対し秋津レークタウン建築協定(以下「本件
建築協定」という。)違反を理由にその撤去を求めて請求外会社との間で熊本地方裁
判所において民事係争中である。
請求人は、熊本市建築主事が本件建築物に対してなした建築基準法(昭和25年
法律第201号)第6条第4項に基づく計画変更の建築確認処分及び検査済証交付
処分の取り消しを求めた審査請求に対する熊本市建築審査会からの裁決書により平
成19年9月14日に本件行為を知ったとして、本件審査請求をなした。
(2) 審査請求の根拠
① 処分について
建築許可を受けずに建築してはならない本件建築物を、処分庁が許可は不要と
判断した本件行為は、法律の禁止規定中の例外規定を無審査で与えたのと等しく、
行政不服審査法(昭和37年法律第160号。以下「審査法」という。)第2条第
1項に規定する事実行為であり、審査法の不服申し立ての対象となる処分に当た
る。
建築許可を必要とするかどうかについての判断権限は、専ら市長に属し、処分
庁が報告書への記載の申請に対して都市計画法施行規則(昭和25年建設省令第
40号。以下「省令」という。)第60条に基づく証明(以下「適合証明書」とい
う。)に準じた手続として行ったとする本件行為は、申請に応えて処分をなしたと
いうことである。
建築主事の法第42条第1項についての建築確認の審査権限は、形式的、外形
的なものにとどまり、建築主事が自ら許可の要否の審査をすることは許されない
から、建築主事は適合証明書により、法第42条第1項の適合性を確認したにす
ぎず、処分庁のなした判断が行政行為そのものであり、審査法第2条第1項に定
義される処分である。
② 審査請求期間について
審査法第14条は、審査請求は同条第1項で「処分があったことを知った日の
翌日から起算して60日以内」 と、同条第3項で「処分があった日の翌日から起
算して1年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由がある
ときは、この限りでない。」と規定している。平成18年5月当時、本件審査請求
に係る本件行為の存在は公表されておらず、請求人は、熊本市建築指導課に対し
建築確認済証の根拠を示す証拠文書の提示を求めたが、関係課と合議したと述べ
るだけで文書類の提示はなされず、一般的な市民である請求人が本件行為の存在
を知る機会はなく、請求人がその事実を知り得たのは、平成19年9月14日に
熊本市建築審査会から送達された裁決書又は平成19年10月4日に市長から入
手した報告書を含む回答文書によるものであるから審査請求期間内になした適法
なものである。
また、処分庁が主張する平成18年6月16日の秋津レークタウンの公民館で
の「建築許可は不要と判断した根拠等についても説明を行なっている。」との弁明
は、資料等の提供も受けておらず、そのような認識もなく虚偽である。
(3) 本件行為の違法性
① 開発許可条件及び建築協定違反
本件開発区域は、本件開発許可に開発許可条件として「建築協定及び緑化協定
を速やかに締結すること」を、昭和63年9月16日付けで交付された法第36
条第2項に基づく開発行為に関する工事の検査済証(建第開14号。以下「本件
検査済証」という。)には、「開発許可の条件として、建築協定を締結すること」
を附しており、本件開発許可の条件に基づき締結された本件建築協定には「スー
パーマーケット専用」と明確な用途の規定がある。本件開発許可は、本件建築協
定が締結されなければあり得なかったものであり、処分庁は、本件開発許可の条
件を第一義的に遵守すべき立場にありながら、本件建築協定が有効に存在する間
は本来基準とすべき建築物の用途制限を軽視して、本件開発許可の条件を曲解し
て「建築協定が廃止になった場合においても・・」という、いわば仮定の文章を
優先適用した結果、スーパーマーケット用地に本件建築物である焼鳥屋が建築さ
れることとなった。
本件開発区域に建築できる建築物は、本件開発許可の条件として床面積1,5
00平方メートル以下と定められており、この条件の趣旨を曲げて敷地分割して
店舗を新設していくということは、本件開発許可の条件に違反することであり、
都市計画法及び建築基準法にも違反し不当である。
国土交通省の運用指針においても、建築協定が結ばれた市街化調整区域内の開
発区域は、開発行為完了後も、既に市街地を形成している区域と一様に扱うので
はなく、生活環境保持への行政の特段の配慮を行うよう示している。
また、自治会長及び生協の理事長の同意書をもって、地域住民の意思を代表す
るものとして位置づけているが、同氏は本件行為に対してそのような法的権限は
なく、両氏とも平成18年7月7日付で同意を撤回している。
したがって、処分庁は、本件開発許可の条件として附された本件建築協定につ
いて、その適用を誤ったものであり、都市計画法にも違反するものである。
② 法第41条及び第42条第1項違反
本件開発区城は、上記①で述べたとおり、本件建築協定に明確な建築基準が定
めてあり、請求人には許容できないが、仮に店舗、一般飲食店の建築が認められ
ると解釈しても、処分庁が主張する法第34条第1号に規定する店舗(以下「1号
店舗」という。)には本件建築物である焼鳥屋は、処分庁が作成している「開発許
可申請の手引き」にも掲載されておらず、前例として挙げている日本料理店も参
考事例とはなり得ず、1号店舗として全国的にも許可事例がないように遊興飲食
店は適合しない,
処分庁が主張するような裁量が認められるものではないが、もし、「開発許可申
請の手引き」の基準に反するような裁量権があるのなら、むしろ上記①のような
特段の配慮をすべき区域であることに鑑み、不許可とするか、請求外会社に建築
許可申請書を提出させて熊本市開発審査会(以下「当審査会Jという。)の判断に
委ねるべきであった。
更に、本件建乗物は、処分庁が主張する本件開発区域の既設建築物(スーパー
マーケット)の用途変更ではなく、別の新築建築物であり、建築許可が必要であ
ったのに許可を受けさせずに建築させたものであり、法第42条第1項違反であ
る。
また、処分庁は、本件開発区域が第二種中高層住居専用地域相当と主張するが、
用途地域が定められていない地域に建築制限を定めるのであれば、法第41条に
基づき建蔽率等の建築制限を定めなければならないのに、法的公的手続を経ずに、
根拠のない用途地域を指定することは都市計国法に違反している。
③ 行政手続法等違反
処分庁は、行政手続法(平成5年法律第88号)に基づき審査基準や処分基準
を具体的に定め、公にしておく義務があるにもかかわらず、処分基準を明確にし
ておらず、本件行為の際も、即刻、建築行為に該当せず、建築許可は要しないと
判断しており、その根拠基準は正当、公平とはなり得ず、担当者の恣意によって
行政行為を行ったものである。
また、処分庁には、本件行為に関してこれを証する一切の文書の作成、保存が
なく、起案、決裁のない事務処理であり、行政行為への信頼性を欠くものである,
したがって、処分庁が行った本件行為は、法第42条第1項等に違反するため、
裁決により取り消されるべきである。
2 補佐人の主張
補佐人の主張は、口頭審理おける発言によると、その趣旨は次のとおりである。
補佐人は、平成17年5月に秋津レークタウンの自治会長に就任し、その直後に請
求外会社からスーパーマーケットがなくなるからと言われ、建築協定や建築基準法な
どの法律も知らずに本件建築物の建築の同意書に印鑑を押してしまった。後日、補佐
人には本件建築協定に関し権限が全くないことが分かり、熊本市長に撤回の文事を郵
送したところである。建築協定や法律について精通した熊本市が、何の権限もない補
佐人の同意書を提出させるような行政指導を何故行ったのか、憤慨に堪えない。これ
以上補佐人の同意書を利用するのを止めていただきたい。
3 処分庁の主張
処分庁の主張は、弁明書、再弁明書及び公開による口頭審理における発言によると、
その趣旨は次のとおりである。
(1)本案前の主張
本件審査請求を却下するとの裁決を求め、次のとおり弁明した。
① 行政行為の不存在
適合証明書に準じた手続である本件行為は、建築行為について定めた法第42
条第1項の要件に該当する事実を満たしているか否かの確認にすぎない形式的、
包括的なものであり、審査請求の対象となる国民の具体的な権利義務に直接明示
的に触れたものではない。
これに対し、建築基準法第6条第1項及び第4項は、建築計画が建築基準関係
規定その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法令に適合するものである
ことについて、事前に申請し、建築主事の確認を受けなければならず、審査の結
果、適合すると確認したときは、建築主事は当該申請者に確認済証を交付しなけ
ればならないと規定しており、建築主事は、都市計画法を含む建築物の敷地等に
関する法令の適合性についても判断権限を有している。
建築主事は、都市計画法に基づく処分性のある許可、不許可の処分の場合は、
独自に建築物の敷地等に関する法令の適合性を判断できないが、それ以外の場合
は判断権限を有しており、この判断権限は、建築物が関係法令規定に適合してい
るかどうかであって、開発担当部局がどう判断しているかというような外形的な
事項に限定されない。また、適合証明書は、建築基準法施行規則等の一部を改正
する省令(平成19年国土交通省令第66号)第1条の規定による改正前の建築
基準法施行規則(昭和25年建設省令第40号。)第1条の3第11項第3号に基
づき特定行政庁が規則により添付の必要なしと定めた場合は、申請書に適合証明
書の添付は必要なくなる。この場合は、建築主事が法第42条第1項の適合性の
判断をすることを考慮すれば、建築主事の判断権限は、外形的、形式的な判断権
限ではなく、実体的な判断権限である。
したがって、建築許可の要件に該当する事実の存否の確認にすぎない本件行為
は、それ自体として法的効果を生じさせないから、審査請求の対象となる行政処
分に該当せず、本件審査請求は不適法なものとして却下すべきものであるら
② 審査請求期間の徒過
審査請求は、審査法第14条第1項に「審査請求は、処分があったことを知った
日の翌日から起算して60日以内にしなければならない。」と規定されている。請
求人は、本件行為があったことを知った日を熊本市建築審査会の裁決書が送達され
た平成19年9月14日と主張するが、平成18年6月14日に開発景観課職員が
秋津レークタウンの公民館の勉強会で、建築許可を不要と判断した根拠等について
説明を行っている。審査法第14条第1項本文の「処分があったことを知った日」
とは、処分の名宛人以外の第三者については、諸般の事情から第三者が処分があっ
たことを了知したものと推認することができる日であることから、請求人が「処分
があったことを知った日」は、平成18年6月14日であり、その日の翌日から6
0日を経過していることは明らかである。
審査法第14条第3項に「審査請求は、処分があった日の翌日から起算して1年
を経過したときは、することができない。」と規定されている。本件行為は、平成
18年5月11日に行われており、本件審査請求が提起されたのは平成19年11
月12日であるから、既に1年を経過していることは明らかである。同項には正当
な理由がある場合のただし書の規定もあるが、請求人からはただし書規定に該当す
る理由は示されていない。
したがって、本件審査請求は、審査法に規定する審査請求期間を徒過したもので
あり、このことからも、不適法なものとして却下すべきものである。
(2)本案の主張
本件審査請求を棄却するとの裁決を求め、次のとおり弁明した。
① 本件検査済証には、本件建築物が建築された本件開発区域に建築できる建築物は
店舗と定められており、店舗(スーパーマーケット)が建築されている。ここで、
市街化調整区域において建築が認められる店舗については、1号店舗の基準に基づ
き判断しており、1号店舗は、開発許可制度連用指針(平成13年5月2日付け国
総民第9号国土交通省総合政策局長通知。Ⅲ-6-2(3))において許可権者の裁
量を認めている。本市においても、その法の趣旨に基づき判断しており、飲食店を
1号店舗として取り扱うことは許可権者の裁量の範囲であり、過去に許可した事例
もある。
② 請求人は、本市が本件行為を十分検討もせず恣意的になしたと主張するが、本
件行為に当たっては、開発景観課において本件建築物の建築許可の必要性について
検討を行い、報告書に地元自治会長等の承認書が添付されていることを確認し、請
求外会社に対しては、建築協定が締結されているため、建築確認申請に際しては建
築指導課の指導を仰ぐよう指示するなどその手続に瑕疵はなく適法なものである。
③ 請求人は、本件建築物が既存建築物の用途変更ではなく、建築許可を必要とす
る予定建築物以外の新築であり、本件行為は違法であると主張するが、開発許可は、
一般的な禁止の解除とされているから、本件開発区域に認めた予定建築物と同じ用
途であれば、他の法律及び開発許可条件を満足すれば違法ではない。
④ 旧法第34条第10号イに基づく大規模開発行為による開発区域は、将来、優
先的かつ計画的に市街化を図るべき区域として市街化区域への編入が想定される
ため(昭和44年9月10日建設省都計発第102号建設省都市局長通達Ⅲ-2
(2))、開発許可に際しては、市街化区域への編入後に違反建築物が生じないよう、
法第8条第1項第1号に規定する市街化区域の用途地域を指定するのが一般的で
あり、許可権者が熊本県知事から熊本市長に移ってからの大規模開発行為に対する
許可に際しては、全て開発許可の条件として用途地域を指定している。
本件開発行為についても、本件開発区域以外の開発区域については、建築物の用
途の基準は、当時の第一種住居専用地域(現在の第一種低層住居専用地域)に建築
可能な用途と本件検査済証に記載している。このことから、本件開発区域の用途地
域は、本件検査済証に記載された建築物の用途の基準から鑑みると当時の第二種住
居専用地域(現在の第二種中高層住居専用地域)が該当していると考えられるため、
本件建築物は、当該用途地域に建築できる店舗等に該当し、問題はないものである。
第2 口頭審理
平成19年12月20日(木曜日)に口頭審理を行い、請求人、補佐人及び処分庁
が出席した。
第3 当審査会の判断
本案前の争点について
本件行為は、審査法第2条第1項に規定する事実行為であり、審査法の不服申し立
ての対象となる処分に当たると請求人が主張するので、本件審査請求に係る本件行為
の処分性について検討する,
(1) 都市計画法は、建築行為に関する許可、不許可の権限を市長に付与しているところ
からすると、市長は、本件行為を行うに当たり、建築許可の申請者が当該土地上に建
築しようとする建築物が法第42条第1項に該当するものかどうかの判断権限を有し
ていると解され、市長は、建築行為を行おうとする者の建築計画が建築許可を要する
建築行為であるかどうか判断することとなる。
(2) 市長が当該建築計画について、建築許可が必要と判断した場合は、建築行為を行お
うとする者は都市計画法の手続に従い建築許可を受けなければならず、また、建築許
可の要件を備えていないと判断した場合は、建築行為を行おうとする者が建築許可の
申請をしても不許可処分となる。
(3) また、建築基準法は、同法第6条第1項で、建築主は同項各号に規定する建築物の
建築等をしようとする場合には、事前に当該建築計画が建築物の敷地等に関する法令
を含めた建築基準関係規定に適合することの確認申請を行い、建築主事の確認を受け
なければならないと規定していることから、建築主事には広く建築物に関する建築物
の敷地等に関する法令を含めた建築基準関係規定の適合性についての審査権限がある
と解される。
(4) 請求人の添付1及び添付11の資料によると、平成18年5月11日付けで請求外会
社が処分庁に対し報告書を提出し、これに対し処分庁は同日付けで報告書に法42条第
1項に規定する用途の変更には該当しないと判断し、「許可不要」と記載されたことが
確認される。
(5) ここで、本件行為は、請求外会社の処分庁に対する申請を端緒としているものの、
処分庁が建築確認の事前手続において建築物の敷地等に関する法令の適合性について
審査権限のある建築主事に対し行ったものと認められる。省令第60条に規定する方
式とは異なるこの方式で行われたものである限りにおいて、本件行為は、行政機関相
互間の、すなわち行政組織内部の行為であるといえる。
(6) そうであれば、本件行為は、外部に対して効力を有するものではなく、これによっ
て、「直接に」国民の権利義務を形成し、又はその範周を確定する効果を伴うものでは
ないので、本件行為に処分性は認められない。
(7) また、本件行為は、建築確認という行政処分が行われる前段階における通知あるい
は確認に過ぎず、そのような行為には都市計画抵及び建築基準法その他関係法令の解
釈上も、処分性は認められない。
(8) さらに、本件行為時、審査法第2条第1項の「公権力の行使に当たる事実上の行為
で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するもの」にも該当しない。
以上のとおり、本件行為は、行政処分性を有するものとはいえないから、その余の点
について判断するまでもなく、本件審査請求は不適法といわざるを得ない。よって、審
査法第40条第1項の規定に基づき主文のとおり裁決する。
第4 当審査会の補足意見
なお、裁決の理由は以上のとおりであるが、本案にかかわる論点等について、なお
付言する。
1 本件で問題となっている建築協定に関して、その重要性については、当事者間の主張に
大きな隔たりはないと思われる。もっともその法的効力ないし射程範囲については意見の
一致が見られない。
今日、いわゆる「まちづくり」ないし広義の住環境整備には多くの人々の関心が集まる
に至っている。そして建築協定は、何らかの形で行政の関与を伴う「公共契約」の一形式
として、この分野における関係法令による規制等を補完し、場合によっては、上乗せ規制
をするものと考えられている。その意味において建築協定は、まちづくり関連の法体系に
おいても重要な地位を占めるものである。建築協定の締結当事者においては不断の対話・
交渉等によりその内容の維持・確認や諸状況の変化への対応が求められるとともに、行政
においては特にまちづくりに関する様々な権限行使に当たり、建築協定の尊重が強く求め
られることとなる。この点において建築脇定は、純然たる私人間の契約とは性質が異なり、
行政もその内容を担保するためには協力することが求められる。
2 省令第60条が求める事前手続は、申請者の予測可能性確保等の観点から、必要不可欠
なものであるとして定められていると考えられる。熊本市においては、この手続に替えて
「建築確認申請事前調査報告書」を用いた独自の手法によることとしている。このこと自
体が行政の裁量権の逸脱であるとまでは言えず、違法なものとも判断することはできない。
しかしながら、この独自の手法は、申請者の便宜などの点では利点が認められるが、他方
において行政過程の不可視化を促進するという弊害も完全に否定することはできない。す
なわち、建築確認に至るプロセスが過度に行政組織内部での手続に偏ることにより、その
部分が著しく不可視化され、建築確認等の最終的な処分に関する事後的な検証可能性をも
低下させる可能性がある。行政として今後、このような意思決定のプロセスの透明化及び
事後的な検証可能性確保に向けた何らかの方策について検討する必要性がある,
3 本案に直接かかわることではないが、当審査会としては、住民が終のすみかとして安心
して暮らせる住環境維持の実効性を高めるために、行政及び請求外会社と「協働によるま
ちづくりjを推進する視点に立ち、将来に向けて、地区計画の策定又は建築協定を尊重で
きるような状況をつくりだしてもらいたいと考えている。
平成20年1月11日
熊本市開発審査会
会長 篠原 亮太 会長印
教 示
この裁決については、この裁決があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内
に、熊本市(訴訟において熊本市を代表する者は熊本市長となります。)を被告として、処
分の取消しの訴えを提起することができます。
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